書面によらない贈与の解除(550条)  贈与契約は、無償(対価を伴わない)、片務(対価的関係に立つ債務を負担しあう関係にない)、諾成(合意だけで成立)契約である(549条)。  贈与の中心的規定は550条である。書面によらない贈与は各当事者が「解除」できる。ただし、履行の終わった部分はこの限りでない。同条の趣旨は、①贈与者の意思が客観的に明確になるのを待つことで将来の紛争を防止すること、②軽率な贈与を防止することにある。「書面によらない贈与」であるかどうかは、この趣旨に照らして判断され、判例は「書面」を緩やかに認定している。最判昭60・11・29民集39-7-1719は、贈与不動産の登記名義が贈与者の前主に残っていた事案で、贈与者が、前主に受贈者への移転登記をするよう求める書面、を司法書士に依頼し作成して、前主に対して内容証明郵便で送付した書面をもって、本条にいう「書面」にあたるとした。  書面によらない贈与でも、履行の終わった部分は解除できない。履行とは、動産については引渡し、不動産については登記でも引渡しでもよい(最判昭40・3・26民集19-2-526参照)。引渡しは、現実の引渡しでなくても、占有改定や簡易の引渡しでもよい。簡易の引渡しは、病気でもう助からないと覚悟した男性が、内縁の妻に、一緒に住んでいた土地建物を贈与し、自分が買い受けたときの契約書と実印を渡したケース等である。  なお、英・独・仏では、贈与は様式行為で、公正証書等がなければ契約としての拘束力を生じないし、一定の要件のもとに、履行後の撤回を許している。 [内田『民法Ⅲ』3版(2011年)165頁-166頁参照] / 撤回、取消、解除  民法上、撤回とは、意思表示をした者がその意思表示の効果を将来に向かって消滅させること(540条2項等)。  民法上の取消しは、意思表示に欠点があるために不確定的に有効とされる法律行為を、法律上定められた一定の事由(取消原因:制限能力・詐欺・強迫)に基づき特定の者(取消権者)の一方的な意思表示によって遡って無効とすること。  解除とは、契約が有効に締結された後に、契約当事者の一方だけの意思表示によって、契約関係を遡及的に消滅させることをいう。合意で解除される場合もある。 [有斐閣『法理学小辞典』4版補訂版、等参照]
2024年9月1日
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