『あなたの中の私』
「これ、好きだったよね」
そう言って、
何気なく渡されたものが、
思っていたより、
嬉しかった
特別なものでもない
たぶん、
自分でも忘れていたくらいの、
小さな「好き」だった
それを、
誰かが覚えていた
「そういうところ、いいですね」
何気なく言われた言葉が、
妙に残ることもある
自分では、
気にも留めていなかったところ
誰かに見せようとも
していなかったところ
そこを、
誰かが見つけていた
不思議だった
もらったものより、
覚えていたことが嬉しい
言われた言葉より、
見つけられたことが嬉しい
たぶん、
人はときどき、
相手の中にいた自分を
受け取っている
何気なく話したこと
いつもの癖
少しだけ頑張ったこと
自分では、
もう通り過ぎていたもの
それが、
誰かの中には残っていた
「覚えていたよ」
「見ていたよ」
そんな言葉は、
どこにもないのに
もらったものや、
ひと言の中から、
なぜか、
それだけは伝わってくる
自分の知らないところで、
自分が、
誰かの中に
少しだけ、
いた
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