「×チル」恣意セシル
何年経っても、ねえ、私のみかたでいてくれる?
午後十時二十一分。滅多に鳴らないスマートフォンが、ポロン、と、声を上げた。
『明日、十九時に、雪緒の働いてた喫茶店で。』
たったそれだけの文章がロック画面の上に浮かんでいる。
十五年ぶりの連絡だというのに随分と素っ気無い。相変わらず変わっていないなあと苦笑する。
僕はスマートフォンを手に取り、了解、とだけ返した。
遠い日のふたり。連綿と続く明日を信じられなかったふたり。僕はとっくに大人になって、信じようが信じまいが明日が来ることを知ってしまったけれど……君はまだ、そこに取り残されているのかい?
悲しいような、嬉しいような、不思議な気持ちだった。
どうして、というべきか。どうしよう、というべきか。明日のことを一瞬考えるけれど、考えるまでもない。
なぜなら僕はあの日、約束をしたのだ。メールの主である透子と。