室生犀星
「女ごのための最後の詩集」より
けふといふ日
時計でも
十二時を打つときに
おしまひの鐘をよくきくと、
とても大きく打つ、
けふのおわかれにね、
けふがもう帰って来ないために、
けふが地球の上にもうなくなり、
ほかの無くなった日にまぎれ込んで
なんでもない日になっていくからだ、
茫々(ぼうぼう)何千里の歳月に連れ込まれるのだ、
けふといふ日、
そんな日があったか知らと、
どんなにけふが華やかな日であっても、
人びとはさう言ってわすれて行く、
けふの去るのを停めることが出来ない、
けふ一日だけでも好く生きなければならない。
音楽🎶 帰ってきたシキシマさん
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