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久しぶりショートSTORYが書けました㊗️笑

#ショートSTORY #言葉に出してしまうと…   【言葉に出してしまうと… 】    「お疲れ様」  明るく装った声で挨拶をして  ドアを開けると  暗闇が更に胸の中にしまっている言葉を  思い出させた  あまりの寒さに手袋を探したが  入れたはずのポケットには無かった   駅まで歩いていると すっかり身体が冷えている  かじかんだ手でICカードを持つと  ほとんど感覚は無い  電車は、まだ到着予定では無い様子だが  私は足早に歩いていた  何か自分に目的が無いと  また 胸の中の言葉が出てしまいそうで  わざと背筋を伸ばして歩いた      ホームのベンチに座ると  慌ててイヤホンで音楽を聴いた  それにしても寒い  五分も待たないうちに電車は来た  上りは空いている  好きな場所に座れる贅沢な時間が好きで  いつもはシートの中央にドーンと座る私が  今日は、ドアの近くの隅の席に腰を下ろした  最寄り駅で降りるとエスカレーターの乗り場だ、なんだかんだ言っても  ちゃんと その計算は出来ている  スーパーに寄って買い物をする気にもならず  家路を急いだ  駅から近い場所に少し前に担々麺のお店が出来ていた 中を覗くとカウンターで  入り口には食券の自動販売機が見えた  普段なら通り過ぎるその店の前で  私は立ち止まった    大きく息を吐いて のれんをくぐり  自動ドアに手をかざす  「いらっしゃいませ」と勢いの良い声が  狭い店内に響いて   慣れないから買い方も良く分からずに  モタモタしている私を  常連客だと思う人が私を見た  だけど また何事も無かったように  麺をすすっている    ほとんどのお店でICカードが使えるのに  どうやら現金のみ の様子だ  まだ、寒さで感覚の無い指で  私は千円札を取り出して食券のボタンを押した 生ビールが290円⁈ 安いな と心の中で思った私は そのボタンを押した  次に担々麺のボタンを押したかったのだが  ランプが消えていた  そのうち時間切れですと言わんばかりに  お釣りが出て来た    数秒後に気がついた  千円札一枚では ビールと担々麺は食べれない 慌てて持っていた小銭を入れて  やっと食券を手にして  カウンターに座ると   荷物を置く前に 「細麺と ちぢれ麺 どちらですか?」と聞かれて  どう違うのかも考えずに 「ちぢれ麺お願いします」と答えた    食券を買う時に使っていた  老眼鏡が 店内で白く曇り始めて  私は眼鏡を外した  油断すると、また心にしまった言葉が浮かんで来そうで  店内に流れていたJ-WAVEに耳を傾けた    まだ、若そうな女性アーティストが  自分の経験談を語っている 「大きなポスターを貼ってもらった時 あれは嬉しかったですね〜でも、その後 何だか  進んで無いようで と言うより  下がっていくような感覚になって…不安で孤独で寂しかったんですよね〜」    私は耳をそばだてた  そのタイミングでカウンターに  私がお願いしたどんぶりが置かれた  「お待ちどうさま」と言う声が  ラジオから聞こえる彼女の声とリンクして  私は 担々麺を食べながら  泣きそうになった    私が心に抱えていた、全てを ラジオの中の彼女が声に出して伝えていたのだ  癖のある山椒の味が口の中に広がり  私は、ビールでその痺れを流し込んだ    そう、私が言葉にしなかったのは  「孤独 不安 寂しさ」  だから私は、わざとそれを感じる場所に身を置きたかったのかもしれない  そこに身を置いたら この違和感が薄れるかもしれないと思ったからだった   私は、麺をすすう動作を繰り返していた     空いていたお腹が満たされ始めた時  その女性アーティストの歌声が店内に響いていた…   私は彼女を知らない  だけど、今夜は その知らない彼女に救われた思いがした。  席を立ち「ご馳走様でした」と言いながらカウンターに空になった丼とビールのグラスを置いた  外に出ると相変わらず寒い  だけど、気持ちは少し緩んでいた    歩きながら少し笑った  (やれば出来るじゃん)  そう思ったら心の中に秘めていた言葉が  去っていった… そして、ラジオから聞こえた彼女に  一緒に頑張ろ〜と言いながら歩いていた…。  
2月1日
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