徘徊はメッセージ
徘徊という言葉には「意味もなく歩き回る」という響きがあります。そのため、長い間“困りごと”や“問題行動”として扱われてきました。しかし、認知症の方の行動には、必ず何らかの理由や意図があります。「家に帰りたい」「仕事に行かなくては」「探し物をしている」──そうした心の声が形になって表れているのです。
私が30年前に勤務していた老人ホームでは「徘徊」という言葉を使わず、「今日もお散歩ですか?」と声をかけていました。たった一言で、その後の対応が変わります。「ご一緒しましょうか」「お茶にしましょうか」と、自然に寄り添う会話につながるのです。
かつては回廊型のフロアをつくり、ぐるぐる歩かせる設計が奨励された時代もありました。しかしそれは本人の尊厳を守るものではありませんでした。今では「歩くことに意味を見出す」視点が重視され、徘徊を“止める”のではなく、“意味を探る”ケアが広がっています。
徘徊は困りごとではなくメッセージ。大切なのは、そのメッセージを受けとめる場と機会を私たちがつくることです。
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