今回のDTMショートドラマは写真家の恋人を亡くした女性、理沙をNYさんが演じてくださいました
悲しみから立ち直る姿をお楽しみください
楽曲申請済
― 月の色の約束 ―Blue Moon Blue
登場人物
• 理沙(りさ):47歳。独身。出版社の編集者。
静かで理知的だが、心の奥に未練を抱えている。
• 彼:理沙のかつての恋人。写真家。すでにこの世にはいない。
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理沙(モノローグ)
月が、青く見える夜ってあるのね。
空気が澄みすぎて、色の境界がなくなるような。
まるで、世界が一瞬だけ息を止めているみたい。
今日で、あの人がいなくなって三年。
でも私の時間は、あの夜のまま止まってる。
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理沙
午前11時。
海辺のカフェ「Blue Moon」。
ここは、写真家の彼が最後に撮った写真展「月の色をした約束」を開いた場所
タイトルの意味を聞いたとき、彼は笑ってこう言った。
“青い月の夜に撮った写真は、真実が写ってしまうんだ”って。
そう言って、彼は私を撮った。
青い月の夜、笑ってるようで泣いてる写真。
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理沙
出版社に務める私は、今日も編集の締切に追われてるはずなのに、どうしても原稿が進まない。
心のどこかで、“もう一度逢えたら”って思ってる。
でも、逢えるわけがない。
だって──
あの人の声は、もうこの世界にない。
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理沙
最後に会ったのは、三年前の夏の終わり。
彼は突然、「撮影で海外に行く」と言って姿を消した。
そして一ヶ月後、事故の知らせが届いた。
カメラと彼のフィルムだけが、帰ってきた。
彼に会いたくて私はそのフィルムをすぐに現像に出した
でも見るのが怖いの。
見たら、きっと本当に終わってしまうから。
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理沙
あの頃の私たちは、何もかも未完成だった。
愛することも、信じることも。
ただ、ただ、惹かれ合うだけで精一杯。
彼はよく言ってた。
“理沙、恋は写真みたいなものだよ。
露出が少なすぎると、何も見えない。
多すぎると、焼きついて戻れなくなる。”
私は、焼きついてしまった方。
あの夜の、青い月に。
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理沙
ねえ、覚えてる?
この曲、あなたがかけてくれたんだよ。
“月の夜に似合う曲”だって。
でも私は、あなたの声を聴いていた。
撮るときの真剣な目も、笑うときに肩をすくめる癖も。
どれも、まだ胸の中にある。
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理沙
帰り道、海に寄った。
今日は満月。
そして…少しだけ青い。
バッグの中には、現像所から戻った封筒がある。
とうとう、開ける気になったの。
震える手で、写真を取り出す。
一枚目に映っていたのは──
私だった。
あの夏の夜の私。
そしてその隣には肩をすくめた彼の影。
まるで、ふたりで月を見上げてるみたいに。
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理沙
彼は言ってた。
“青い月の夜に撮った写真は、真実が写ってしまうんだ”って。
今ならわかる。
彼は、永遠の中に真実の私を残したかったんだ。
私はもう泣かない。
ちゃんと前を向いて生きる。
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理沙
ふと空を見上げると、青い月が浮かんでいた。
まるで、肩をすくめた彼がまた撮ってるみたいに。
“笑って、理沙”って。
そんな声が、聞こえた気がした。
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理沙
青い月の下で、私はやっと本当のことを言う。
あなたに、出逢えてよかった。
さようなら。
そして──ありがとう。
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(END)
DTMショートドラマ
①
「渋谷駅 雨のあと」
ヒロイン:カレンさん
https://stand.fm/episodes/68bd54f975ea7df7c3fa74f0
②
しょくみ'sバー「八月のグラス・アイノカタチ」
ヒロイン:しょくみさん
https://stand.fm/episodes/68b402baf22994a931f3f2a3
③
雨のブックカフェ HONESTY
ヒロイン:もりきむちゃん
https://stand.fm/episodes/68c8202bd2bf41aa329bccc6
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