藤井聡太名人の防衛で幕を閉じた名人戦を振り返り、AI全盛時代における将棋の在り方と、これからの音声配信の可能性について考察します。
現在、将棋界は世界で最もAI活用が進んでいる業界のひとつです。プロ棋士たちは日常的にAIで研究を重ね、対局中継ではAIによる形勢判断が可視化されるようになりました。しかし、どれほど技術が進歩しても、人間がAIの示す正解を完璧に指し続けることは不可能です。圧倒的な有利から逆転が生まれる人間味こそが、現代の将棋の醍醐味となっています。
そもそも将棋が強くなったからといって、政治や経済が動くわけではありません。将棋は実利的な役に立つものではなく、それ自体を楽しむためのゲームです。これからAIによる自動化が進み、多くの人々が時間を持て余す時代がやってきます。そのとき人間に必要なのは、スポーツや芸術、将棋のように、実行すること自体に喜びを見出せる営みです。
日本では江戸時代から、実益を生まない将棋の名人という存在に高い地位を与え、尊敬の念を抱いてきました。この文化的な背景は、これからの音声配信にも通じるものがあるかもしれません。知識を得ることや役に立つこと以上に、ただその話を聞いている時間そのものが面白い。そんな価値についてお話しします。