雨の日になると、
今でもあの頃を思い出す。
高校生だった私。好きだったのは、野球部の先輩。
放課後になると、
体育館の小さな窓からグラウンドを眺めていた。
晴れの日も。曇りの日も。そして、6月の雨の日も。
雨に濡れながらボールを追う姿。
泥だらけのユニフォーム。
仲間と笑う横顔。
その姿を見ているだけで、
胸が少しあたたかくなった。
先輩と言葉を交わすことはあっても、
特別な関係ではなかった。
それでも、すれ違うたびに嬉しくて。
少し話せただけで、
その日が特別な日になる。そんな存在だった。
ある6月の雨の日。先輩と約束をした。
放課後、グラウンドで会おうと。
たったそれだけの約束なのに、
朝から胸が落ち着かなかった。
空は重たい雲に覆われていて、
雨の匂いがしていた。
放課後。
約束の場所へ向かう。
ぽつり。雨が降り始める。それでも待った。
きっと来る。きっと来る。そう信じながら。
制服が濡れても。
髪が頬に張りついても。
雨はどんどん強くなる。
それでも、先輩は来なかった。
あとになって知った。
先輩はその日、
事故に遭っていたことを。
そして、
もう二度と会えない人になっていたことを。
あの日から、雨が嫌いになった。
雨の音を聞くたびに、
約束の場所で待ち続けた自分を思い出す。
来るはずだった先輩を思い出す。
胸の奥が、静かに痛んだ。
だけど――時は流れる。
不思議なことに、
雨の日に思い出すのは 悲しみだけじゃなくなった。
雨のグラウンド。
泥だらけのユニフォーム。
仲間と笑う先輩。
そして、
体育館の窓から見ていた景色。
あの日は、
雨が大嫌いになった日。
でも今は違う。
6月の雨が降るたびに、
大切な思い出が帰ってくる。
会えなくなった人との時間を、
そっと運んできてくれる。
だから今は、
雨も悪くないと思える。
6月の雨が降るたびに、
今でも先輩を思い出す。
雨のグラウンド。
泥だらけのユニフォーム。
あの優しい笑顔。
もう会うことはできない。
それでも、思い出は消えない。
【6月の雨は、空から届く思い出】
#スタエフ初心者 #スタエフはじめました #毎日配信 #音声配信 #ラジオ #朗読 #恋愛 #雨の日の思い出 #雨 #思い出 #スタエフもこもこ放送局 #夜更けのもこカフェ #声優