「愛のバズーカぶっ放してくるよ!」
と言って出かけたマツおばあちゃんは
どこへ行ったのでしょうか?
お題
「マッチングアプリから始まるロマンチックな恋」
で書いた
「コロッケ刑事」後編 (2022年12月8日投稿)
🌱ストーリー
職場を出たマツは近くの商店街へと向かった。
そして、肉屋に寄った。
「ヘイ!らっしゃい!」
「後で来るから、カニクリームコロッケ
3つ取り置きしといてくれる?」
「いいよ。いつもうちの肉仕入れてくれてるからね。
まかしときな!」
「じゃ、お願いね。」
マツは少し足をのばして、商店街の外れ
電車の駅近くの深海カフェへと向かった。
店内の日当たりの良い席にじぃじが座っていた。
マツはじぃじの向かいの席に腰かけた。
「なんだよ。他にも席は空いてるだろ?
ここに来んなよ。」
「ここのコーヒー美味しいよね。
一緒に飲もうと思ってさ。」
「ババァと一緒に飲んでも美味しくないさ。
だいたい、コーヒーの美味しさなんか
お前にわかるのか?」
「豆の種類はわからないけど。真心込めて
淹れてくれたコーヒーの美味しさはわかるよ。」
じぃじは不機嫌そうにため息をついた。
「ブレンドでよろしかったですか?
淹れてまいりますね。」
ふたりのそばにいたマスターは席を外した。
「あんた、今日待ち合わせだろ?アツコちゃんと。」
マツはニヤニヤしながらじぃじの顔を見た。
じぃじはハッとした。
『あなたに特別な出会いを!まっちんぐ』
のことは職場の誰にも言っていないのに!
マツは自分のスマホを見せた。
そこには、じぃじの大本命アツコさんと
今日の待ち合わせの予定が書かれていた。
じぃじの顔はみるみる真っ赤になっていった。
「お、お前、騙したな!」
「騙してなんかないさ。この写真、若い頃の
あたしなんだよ。なかなかイケてるでしょ?」
じぃじとアツコさんのやりとりは
食堂の最年少スタッフ、ヅケちゃんが担当していた。
マツの若かりし頃の写真には少々加工がしてあった。
じぃじは怒り心頭で言葉にならない様子であった。
「いい加減気づきなよ。あたしらみたいなモンはさ
ネットの世界じゃ課金しなきゃ誰も相手になんか
してくれないのさ。課金したらその分だけ視界に
入れてくれるんだよ。それっきりだよ。
あんたのことなんか何とも思ってないよ。
覚えてもいないよ。割り切りなよ。」
「黙れ!」
「あんたが友達だと思ってたみんなは実は
ひとりでやってたかもしれないだろ?
特別じゃなくてさ、普通でいいんだよ。
帰りに肉屋のコロッケでも買って帰りなよ
美味しいよ。あそこのコロッケ。」
「誰がコロッケなんか買うか!」
「職場のみんなが言ってるよ。じぃじ最近
仕事が手につかないようだって。
言ってる意味わかるよね?」
じぃじは心にポッカリと大きな穴が
空いたような気分だった。
恋の痛手はそう簡単には治りそうにない。
じぃじは無言でコーヒーを飲み干すと
無言で店を出て行った。
「コーヒーお待たせいたしました。」
「うちのスタッフのこと気にかけてくれてた
そうで。ありがとうございました。」
「いえいえ。私もあの方のことが気になった
ものですから。でも、これからしばらくは
来なくなるかもしれませんね。
ま、仕方ないですね。」
「暇人の来る所には来なくなるかも
しれませんね。」
「暇人の来る所??」
人知れずマスターにも流れ弾が当たったようである。
「コーヒー美味しかったです。
ごちそうさまでした。」
じぃじは深海カフェからの帰り道
肉屋の前を通りかかった。
店頭には可愛いい娘がいた。
じぃじは迷わず立ち寄りコロッケを買うと
スキップしながら帰った。
娘がお釣りを渡す時、小銭が溢れ落ちないように
じぃじの手をギュッと握ったのである。
その瞬間、じぃじの心には新しい炎がともり
翼が生え空も飛べそうな気分になった。
数分後
マツがやってきた。
「マツさん、用事は済んだのかい?」
「うん。」
「マツさんが言ってた人、さっき来たよ。」
「やっぱり、来たんだね。
悪かったね。無理言って。」
「いいってことよ。」
「大丈夫よ。
マツさん、あの人来たらまた私声かけるね。」
肉屋のオヤジの後ろから娘が顔を覗かせた。
マツ「ただいま。」
ナミ「お姉さんおかえり。」
はな「意外と早かったですね。」
マツ「お土産のカニクリームコロッケだよ。」
はな「うまく気をそらすことができましたね。」
マツ
「あーあ。アツコもじぃじにお小遣い
振込んでもらえばよかったぁ。」
ナミ「お姉さん!」
マツ「冗談だよ。冗談。」
3人は笑った。
数日後
「じぃじが近づいてくると
ポケットの小銭の音がしますね。」
「何でも、商店街の肉屋のコロッケに
ハマったみたいですよ。」
「肉屋の娘さんのファンらしいです。」
「推し活ですかぁ。」
社内の平和も戻ったので
捜査壱課はひとまず解散した。
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