幻の無声映画…何が彼女をさうさせたか
いよいよ終焉に向かうクライマックス
その伝説の活動弁士の語りを紹介します
#何が彼女をさうさせたか
懺悔〜抵抗〜終焉の段
#活動弁士 熊岡 天堂
1930年録音
朗読にどうぞ
すみ子 ...不幸な生い立ちのヒロイン
新太郎 ...すみ子の幼なじみ
おかく ...天使園の同僚
うめ子 ...婦人収容所 天使園の園主
<文字起こし>
やがて日曜日の鐘は鳴り、祈りの歌は聞こえてきた。
「ちょっと時間をいただきまして、姉妹(きょうだい)の一人に証(あかし)をさせます。」
あっと驚いたすみ子、一同の視線が彼女の上に投げ与えられた。
「さぁすみ子さん、さっきの約束通りここへきて告白をなさい。あなたが今までしてきたことを赤裸々にお話なさい。」
無理矢理におかくに勧められて新太郎に書いた手紙は見つけ出され、罪は返って彼女に与えられてしまったのでありました。
彼女は何とも答えなかった。
「よろしい、あなたが恥ずかしくって言えないのなら、私が代わって言ってあげましょう。」
冷笑を含み静かに教壇に向かう主任の姿はあたかも冷酷そのもののごとくでありました。
すみ子はやがてばね仕掛けの人形のごとくに席を離れ、紫苑に燃ゆる二つの瞳は爛々として正面の十字架をじっと睨みつけていた。
「皆さん、神様が愛だなんてみんな嘘です。あんなにお詫びをしたのに許さないで恥をかかせようなんて、神様が愛ならとうに許してもらえているはずです。」
「まぁ何を言うのですか。」
「神様なんてなんだか分かりません。そんな神様なら無い方がずっとましです。天使園なんて嘘です。何もかもみんな嘘です。」
青天の霹靂にも似たる少女の叫びに一同は去った。
その夜、天使園は赤い炎に焼かれていくのでありました。
終焉の屋からうめ子は収容されていた人々を捨てのけ、自己の安全を図るがために唯一人逃れた。
紅蓮の炎は正に球天を焦がさんと成すと、あたかも燃え上がる猛火を眺めて快哉(かいさい)を叫ぶ一人の少女がありました。
「あぁ赤い天使がどっさり舞い上がっていくわ。みんな天国へ行くのだ。」
「こら、お前が火を着けたのか。」
「そうです、あたしが着けました。」
見よ、童顔可憐な一少女は放火の犯人として引かれて行く。
何が彼女をそうさせたのであろうか。
原作者、藤森成吉氏の題名を結語といたしまして、物語全巻の終わりを告げるのであります。
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