Heartyさんの曲と詩が素敵すぎて、溢れ出る想いを抑えきれず(また)自分でも短いものを書きました。
花色月
桜はその葉の色を日に日に濃くしていた。その緑も今は夕暮れ色に染まり、一日の終わりと共に風も弱くなってきた。水紋に揺れていた草木や花はしだいに形を取り戻してきていた。
僕たちは何も言わずに空を、木々を、花々を見ていた。カラスとメジロとスズメとウグイスの声を聞いていた。
日は沈み、鳥たちは声を潜め、木や花も眠った。風は止み、満月が昇り、鏡のような水面に自らの姿を映した。
水面の月のすぐ側に赤いバラ。
「ピンクの芝桜が一面に咲くからピンクムーン。たくさんの花が咲くからフラワームーン」
女は水面のバラをつかむように細い腕を伸ばした。
「すべては止まることなくうつろいゆく」
涙を浮かべて小さく笑った。
「この世は儚いものばかり」
僕が微笑みながら言うと、女は一瞬驚いた顔をしたあと、微笑み返した。
僕は隣にしゃがみ、小指でそっと、女の涙を掬った。
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●今回お借りした曲『桜色月―Pink Moon―』
https://stand.fm/episodes/6627f785b1033a16170f2919
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