「田舎ってのんびりしてていいでしょう?」
「うーん、ボクは都会の方が好きですけどね」
「なんでよ」
「まずね、田舎って乾いてるんですよ。町が」
「乾く……?」
「そう。乾いてるのにジメジメしてるみたいな。白黒の無声映画みたい」
「そうなんだ。でも田舎は都会とちがってお金貯まるでしょ?」
「変わらないです」
「え、家賃安いんじゃないの?」
「家賃は都会より安いですが、けっきょく車がないと生活できないんですよ。つまり」
「つまり、車のお金でトントンになるってこと?」
「イエス! あと、謎の町内のイベントが多い」
「それはメンドーね」
「消防団で集められるとか、よけい火がつきそうですわ」
「まあまあ落ち着いて」
「あと、人をほっといてくれない」
「東京は、人は人、自分は自分みたいなとこあるもんね」
「そう。歩いてるだけでジロジロ見られるし、人の人生につっかかってくるし。そんなとこがジメジメですね」
「だんだん口悪くなってるわよ」
「田舎のせいです」
「どんだけキライなのよ!」