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「ムカつきスイッチの向こう側にあるもの」
美咲(みさき)は仕事帰りの電車で、友人の玲奈(れな)からのLINEに目を落とした。
「今日も上司に理不尽なこと言われて、ほんとムカつく!何で私ばっかり…」
ふと、自分もつい先日、同じように上司に叱られたことを思い出す。
「わかる…ムカつくよねぇ。でも、玲奈がそんなに怒るのって、ちゃんと認めてほしいからなんだよね。」
そう返すと、玲奈からすぐに電話がかかってきた。
「ほんとそれ!頑張っても評価されないし、なんであの人ばっかり…!」
怒りが詰まった声の奥に、何かがこぼれそうなのを美咲は感じた。
「つらかったねぇ、玲奈。
しんどかったねぇ。
悲しかったねぇ…」
ただその言葉を繰り返すと、電話の向こうで鼻をすする音が聞こえた。
「…うん、ほんとに、悲しかった。認めてもらえないって、なんか自分が無価値に思えて…」
涙があふれるとき、人は自分の本当の気持ちに出会う。
ムカつきスイッチの正体は、「わかってほしい」「大事にしてほしい」という深い愛の欲求だった。
「玲奈、その気持ちを知ってもらいたいのは誰?」
「…私自身かも。もっと頑張れってばっかりで、ちゃんと自分を認めてなかったな。」
怒りが強いほど、その奥にある愛も強い。
欲しがるから、与えられる。
「まずは自分に言ってあげよう。頑張ってたね、って。」
玲奈は小さく笑った。
「うん、ありがとう。美咲がいてくれてよかった。」
愛のアウトプッターとしての美咲の本領発揮。
ムカつきスイッチは、愛を与える最高のチャンスだった。