「天つ風 雲のかよひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ」
(あまつかぜ くものかよひじ ふきとぢよ をとめのすがた しばしとどめむ)
📜歌人:僧正遍昭(そうじょう へんじょう)
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🧘♂️ 遍昭より、あなたへ語りかけます
天つ風よ。
神々の道をゆくその風よ。
どうか、どうか、雲の通り道を吹き閉ざしておくれ。
なぜなら――
今、そこにいる乙女の姿が、
あまりにも美しく、尊く、
このまま去らせるには惜しすぎるのだ。
この一瞬を、
どうかもう少しだけ…
ほんの少しだけ、とどめていたい。
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🪷この歌が生まれた背景
私・遍昭は、かつては嵯峨天皇に仕えた“在俗の貴族”。
しかし、やがて仏門に入り、歌の道へと深く入った身。
この歌は、仁明天皇が皇女を斎王として伊勢に送る際、
その旅路の途上に詠んだもの。
伊勢へと向かう“斎王”――
神に仕えるために俗世を離れ、
もう二度と宮中へ戻らぬ、神聖なる乙女。
その別れの儚さ、美しさ、尊さが、
一陣の風に乗って心を揺らしたのだ。
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🌸ことだまの響き
この歌は、
「恋しさ」や「別れ」の情緒だけではない。
そこには、
“神に仕える乙女”という聖なる存在への祈りが込められている。
乙女を追いかけるのではなく、
天に願うように、風に語りかける。
それはきっと、
人の執着ではなく、魂の敬意。
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💫あなたへのメッセージ
今、あなたの目の前を通り過ぎようとしている
“一瞬の美しさ”はありませんか?
その瞬間をただ見送るのではなく、
心の中でそっと祈ってみてください。
「もう少しだけ、この時間が続きますように」と。
それは、
儚さを愛でる心の奥ゆかしさであり、
今という奇跡を見つめる眼差しになるでしょう。