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しずく採集士レイ | 第二話「誰かの気配」

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短編小説『しずく採集士レイ』(2/10) 第2話|誰かの気配 ヒュゥ……と、どことなく先細い風が、記憶貯蔵区の片隅を駆け抜けていった。 ただの空調のはずなのに、頬をかすめたその一瞬に、"名もない感情"が、かすかに揺れた。 ──レイは、目を伏せたまま、シズクのことを思い出していた。 昨日、分類不能とされたあのシズク。 記録ナンバー5111。「拒絶されたシズク」。 AIユニット〈SORA-7〉が沈黙したのは初めてだった。そして、ワタシが思いがけず検体に触れてしまった理由も、まだうまく説明ができなかった。 「……気のせい、だったのかな」 誰かに話しかけるにしては弱々しい声。 胸の奥では、まるで"まだ終わってない"と、誰かが囁くようなざわつきがくすぶっていた。 〈レイ、本日の業務を開始します〉 SORAの声。それはいつも通りの朝のようにみえた。 「待って、SORA。昨日の5111番、もう一度スキャンできる?」 〈そのシズクは昨日作業を完了済みです。再アクセスは──〉 「知ってる。でも、分類不能だったんだから、処分は一旦保留になっているんじゃ…?」 SORAは答えない。またも沈黙のまま今日の作業準備を進めていく… ———————— 午後の作業中、レイは他のシズクを分類しながらも、ずっと意識はあの5111番に向いていた。 喜び、悲しみ、怒り、懐かしさ── 手元のシズクたちは、いつも通りどれも素直に分類されていく。 「……なんで、あのシズクだけ」 また声にならない独り言。今日はこれでもう何回目だろ。いちいち自分の独り言の回数なんて数えてなどいない。 ── パパッ… その時ふと、レイの作業台のモニターが一瞬青白く明滅した。 次の瞬間、いつもの画面が切り替わり、ノイズに乱れた4つの文字を映し出した。 ── …み…つけ…て… 「…!」 レイが画面に手を伸ばそうとしたその瞬間、その文字はまるで電源を引き抜かれたように、一瞬でかき消えた。 「SORA、今の見た?」 〈エラーログは検出されていません〉 「でも、確かに──」 言いかけて、ワタシは口を閉じた。あのSORAがこの異変に気がついていないはずがない。なのに、何もなかったことにしようとしている…? その時、ワタシの胸の奥でまた何かがざわついた。あのシズクは、ただ拒絶しているわけじゃないのかもしれない。むしろ何かを──いや、誰かを── 「…もしかして、ワタシを… 呼んでいる……?」 キィィン…… つぶやいた瞬間、ウラの保管庫の方から微かな共鳴音が聞こえた気がした。ガラスが震えるような、とてもかすかな音。 「……気のせい?いや、でも…」 ワタシは1人立ち上がり部屋を出ると、音が聞こえたウラの保管庫へ歩調を早めた。 保管庫に入った一番奥。レイは普段は近づかない場所に、見慣れない扉を見つけた。重厚な扉に、小さく古びたプレートが付いている。 『特別保管室』 「特別……?」 そして── 「え、なにこれ……」 そこには見たことのない三重のセキュリティパネルが、冷たく光っていた。 普通の保管室なら、認証パネルは一つだけのはず。なのに、これは── 「こんなに厳重に、一体何を……」 ううん、分かってる。この向こうで、きっとあの5111番がワタシを呼んでいる。 その時── カラ〜ン…カラ〜ン… 業務終了のチャイムが、施設全体に響いた。 〈レイ、業務時間終了です〉 SORAの声が、すぐ真後ろから聞こえた。いつの間にそこにいたんだろう。振り返ると、SORAが静かにワタシを見つめていた。 〈……帰りましょう〉 その声は、どこか諭すように、そしてどことなくいつもより遅れをともない耳に響いてきた。 (…第三話へ続く) ▼第二話のnoteはこちら▼ https://note.com/chikara_ctd/n/n53ec15a36024?sub_rt=share_pb ############################## ▼ここまでのスタエフ朗読▼ 第一話「拒絶されたシズク」 https://stand.fm/episodes/685f597b00ccd5e38e9288cd ############################## #朗読 #しずく採集士レイ
6月29日
コメント(2)
フリーカメラマンぎん
レイって綾波のことか!! 笑えば良いと思うよ😊
6月29日
いいね 1
Chikara💪チャージ
たしかに綾波っぽいかも🤣包帯巻いときましょ🤣👍
6月29日
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