🍁春道列樹の語り
流れる水の音を聞いていた。
澄んだ渓流に、紅葉がひらひらと舞い降りて、
やがて岸辺に集まり、せき止める。
それを見て、ふと思ったのだ。
美しいはずのものが、
なぜ、こうして流れをさまたげるのかと。
それはまるで、自分の心のようだった。
恋しさも、懐かしさも、誇りも──
どれもかつては清らかな想いだったはずなのに、
それを手放せぬままに積み重ねてきた結果、
いつしか「しがらみ」になっていた。
人の世とは、そういうものかもしれぬ。
尊いがゆえに、手放せず、
美しいがゆえに、執着する。
けれど、水は流れてこそ清く、
心もまた、流れてこそ生きるのだ。
そう詠まずにはいられなかった。
紅葉の流れが、私にそれを教えてくれたから──