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スポーツが教えてくれる「絶対的な能力」とは

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― 人間力を支える“絶対的な我執”という芯 ― 私たちは、なぜ子どもにスポーツをさせるのでしょうか。 体力をつけるため? チームワークを学ばせるため? 礼儀作法を身につけさせるため? それらはもちろん正しい理由の一つです。 しかし、もっと本質的な問いがあるはずです。 それは――**「人はなぜ競技によって、人間として深くなるのか」**ということ。 この問いに対して、私はこう考えます。 スポーツや競技を通して得られるもののうち、最も重要なのは、 “絶対的な我執”という、揺るがぬ自己への確信 ではないかと。 絶対的な我執とは何か? 「我執(がしゅう)」という言葉には、仏教的にはネガティブな意味があります。 それは「自己に対する過剰な執着」を意味します。 しかし、ここで言う「絶対的な我執」はそれとは違い、 自己を見つめ抜いた先に得られる、“手放すことすら可能なほどの自己確信” とでも呼べるものです。 勝ち負けの世界で戦い抜いた人間は、 自分がどこまでやれるか どこで逃げてしまったか それでも向き合い続けられたか という、他人には測れない自己との対話を経て、一本の芯を持つようになります。 その芯が、見る者には「かっこいい」「落ち着きがある」「信頼できる」と映る。 これこそが、「人間力の核としての我執」であり、スポーツが育む“絶対的な能力”なのです。 小さな“世界一”が生み出す、揺るがぬ芯 ここで一つ、実例をご紹介します。 ある地方の中学校で、ある生徒が陸上競技で1位を取りました。 全国大会に出た経験もなければ、特別な環境があったわけでもありません。 しかし彼は、限られた環境の中で、 自分で練習メニューを考え、 誰よりも早くグラウンドに来て、 負けた相手にも敬意を払い、 結果として「自分のやりきった1位」を掴んだのです。 この“自分なりの頂点体験”は、単なる成績以上の価値を持ちます。 彼はその後、より大きな舞台に挑戦する中で何度も敗北を経験しますが、決して自分を見失わない。 なぜなら、彼の中にはこうした“やりきった自分”に対する確信――絶対的な我執があるからです。 こうした人は、新しい競技、新しい環境、新しいコミュニティに入っても、焦らず、比べず、ぶれない。 そしてその姿は、「結果が出なくてもかっこいい人」として周囲に映るのです。 成績ではなく「自分との一致感」がすべて ここで大事なのは、全国優勝でなくても構わないということです。 たとえクラス内、町内、部内での1位であっても、それが**“自己の限界と向き合って得た1位”**であれば十分です。 誰に見られていなくても真剣だったこと 結果だけでなく過程に誇りがあること 自分の中で「これは嘘じゃなかった」と言えること それが、結果に左右されない強さ、他人に認められなくても堂々としていられる人格の土台になる。 そしてそれは、その後のあらゆる挑戦の場面で、学びの質を決定づけるのです。 なぜ“経験なき無”は揺れやすいのか? 一方で、「何も成し遂げていない無」には、芯がありません。 それは仏教のいう「無(空)」とは異なり、ただ“自己確信の不在”というだけの状態です。 自分が何者かわからない 承認を求めて過剰に外に合わせてしまう 比較の中でしか自己を保てない こうした状態では、新しい環境に飛び込んだときに大きくブレます。 つまり、「経験によって形成された我執」と「未経験の無」は、似て非なるものなのです。 教育としての競技の意義 だからこそ、私たちが子どもたちに競技をすすめるときに伝えたいのは、 「全国で勝て」「誰よりうまくなれ」ではありません。 “一度でいい、自分にとっての本気の頂点を目指してごらん” そう促すことです。 それはクラス内のプレゼンでもいい 地元の小さな大会でもいい 誰にも評価されなくてもいい 「これは逃げなかった」と思える経験 「これは自分の力だった」と言える実感 それこそが、絶対的な我執を生み出し、一生揺るがぬ人間力をつくるのです。 終わりに:勝ちにこだわったからこそ、手放せるものがある 「勝ちにこだわった者だけが、勝ちを手放せる」 この言葉が教えてくれるのは、 「一度、本気で勝ちを目指し、敗北を知り、なお向き合い続けた人間だけが、  “勝たなくても私は私だ”と言える」という真理です。 その境地に至った者の“静かな我執”は、何よりも強い。 それは、職場でも家庭でも、どんなコミュニティでも、 その人の在り方としてにじみ出て、信頼と尊敬を集めるのです。 子どもに贈りたい問いかけ 「今、自分が本気で向き合っていることはあるか?」 「一度、自分に勝ったと思える経験はあるか?」 この問いを贈れる大人でありたい。 そして、子どもが「はい」と答えられる環境を一緒に築いていけたら、 その子はどこに行っても、必ず学び、強く、かっこよく生きていけるはずです。
7月15日
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