「マクドナルドに授業を抜け出して行ったのが、人生で一番の悪事かもしれません」
そう笑って語るのは、整理収納アドバイザー1級とキャリアコンサルタントの資格を持つ「片付けパパ」こと大村信さん。
部屋を片づけると、人生まで整っていく。
そんな話を聞いたことがありますか?
ただの整理収納アドバイザーではありません。
彼はこう語ります。
「物の片付けから、人間関係、そして人生まで整える」
そう、部屋を整えることは、自分の生き方を整えること。
そんな哲学を持つ“人生の整理人”です。
1.優しい少年が、静岡の田舎で育った日々
父親がいない環境で、おばあちゃん、お母さん、8歳離れたお姉さんに囲まれて育った彼は、「手のかからない子」でした。
子どものころの大村さんは、とてもおとなしくて素直。
女の子と遊ぶほうが安心する、
競争よりも「みんな仲良く」を願う、のび太君のような少年時代。
ところが、その背景には深い物語があります。
大村さんは幼い頃に父親が白血病で亡くなられ、
お母さんとおばあちゃん、そしてお姉さんに囲まれて育ちました。
「だから、男性には苦手意識があったんです」
——この言葉には、彼の優しさと繊細さがにじんでいます。
2.浪人、挫折、そして母への申し訳なさ──
高校時代。
時はバブル崩壊直後。
「銀座で働くビジネスパーソンの就職は厳しくなる」、「理系なら潰しが効く」という情報を信じ、高3直前に文系から理系へコース変更という無謀な挑戦。
成績優秀だった彼は、東京の大学から指定校推薦のオファーまで受けていましたが、「聞いたことのない地味な大学だから」という理由で辞退。
猛勉強の末、第一志望の大学を目指して1年間必死に勉強するも、結果は全落ち。
浪人するも、皮肉にも、1年前に推薦を断った大学に入学することに、、
「推薦で行けるって言われた大学に、
1年浪人して結局入学することになった。
この1年間の時間とお金は何だったんだ…」
普通なら絶望する状況。
使った時間とお金は何だったのか──
そう母親に謝った大村さんに、母はこう答えました。
「それが運命だったんだよ。
この1年間は無駄じゃない。
一生懸命勉強して、努力することができたことは、
きっと将来のためになる」
しかし当時19歳の大村さんには、その言葉を受け入れる余裕はありませんでした。
母子家庭で一生懸命支えてくれた母への申し訳なさ。
自分の選択への後悔。大学時代は不真面目に過ごしました。
3.大学での「不真面目」が生んだ、「サバイバルスキル」
入学初日こそ出席したものの、1週間後にはほとんど大学に行かなくなった大村さん。
バイトに明け暮れる日々。
でも、留年はしたくない。
そこで彼が身につけたのが──「過去問と資料を集める仲介屋」としてのスキルでした。
「これを持ってきたんで、どうですか?」
「ギブアンドテイク」
「みんなでシェアすれば、みんなハッピーじゃん」
競争ではなく、仲間。
争いではなく、協力。
この「サバイバルスキル」こそが、後に彼の人生を支える核となっていきます。
4.就職氷河期、10月の決断
大学4年の10月。
周りが内定を決めている中、大村さんはまだ進路を決めていませんでした。
大学院に行こうか迷っていた彼に、親戚のおじさんが一喝。
「お前の母親、どれだけ頑張ってると思ってるんだ」
その言葉でハッと我に返り、就職活動を開始。
でも時すでに遅し──1997年の10月、超氷河期です。
しかし大村さんは、就職活動の掲示板から1社だけピックアップし、応募。
書類選考、1次面接、2次面接、最終面接──すべてパス。
SPIも受けず、1社目で内定。
「本当に偶然でした」と本人は笑います。
5.「英語喋れます」と言って入社、3週間後に海外出張
最初の会社で3年、システムエンジニアとして激務をこなした後、転職。
2社目の面接でまた言ってしまいました。
「英語、喋れますよ」
入社3週間後、いきなり海外出張の辞令。
「マジか」と思いながらも、英語メールが半分以上。
必死で対応する日々。
でも、そこでまた発揮されたのがサバイバルスキル。
半年でTOEICが200点近くアップ。
海外での仕事もこなせるようになりました。
6.今につながる「仲間づくり」の原点
大学時代に培った「みんなで合格すればいい」という感覚。
それは今、グローバル人事塾、まんせきBar、さまざまなコミュニティでの活動につながっています。
出版、コミュニティ運営、そして20年以上続く会社員生活──。
すべての原点は、「留年しないため」に編み出した「みんな仲良く」「みんなでシェアすれば、みんなハッピーじゃん」というサバイバルスキルでした。
7.現在ー「部屋から人生まで整える」という使命
挫折と葛藤を経験した大村さんは今、大手電機メーカーでマーケティングから人材開発へ。
そしてパラレルキャリアとして「片付けパパ」として活動しています。
物の片付けから、人間関係、人生までを整える。
「物が散らかっていると、生活も散らかる」
子ども時代の"整えられない感情"、
受験失敗という"整理できなかった選択"、
母への想いという"片付けられなかった気持ち"ー
それらすべてが、今の彼の使命に繋がっています。
優しすぎた少年は、どのようにして「人生を整える専門家」になったのか。
ぜひ大村さんの本を読んでみて下さい。
彼の物語は、失敗や挫折を経験したすべての人への、温かいメッセージです。
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