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#105 等身大を貫く勇気、自由と納得のプロコーチ八起さんの人生物語 ②

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1.「あ、私それになる」──その瞬間、すべてが動き出した 就職へのモチベーションがなかった。 専業主婦になるつもりだった。 それなのに、慌てて就職活動をして、 なんとか福岡の不動産会社に滑り込んだ八起さん。 1日100件の営業電話をかける日々。 バリバリの営業職。 新人賞を獲得するほどの成績を残しながらも、 社内のゴタゴタで退職。 誰もが「普通の人生」を歩むと思っていた24歳の女性が、 ある出会いで、22年続くコーチング人生への扉を開けることになります。 その出会いとは、、、 2.変屈な私でも、納得できた 「私、結構 変屈だと思っていて」 八起さんは自分をそう表現します。 何かを学ぶとき、 いつも心の中で 「いや、そうは言っても」 「ここが押し付けがましくないか」と 疑問を抱いてしまう。 素直じゃない、 可愛くない。 そんな自分に気づいていました。 恋人との喧嘩が絶えない。 喧嘩をしたくて付き合っているわけじゃないのに、 どうしてもぶつかってしまう。 どうしたもんか──。 そんな悩みを抱えていたとき、 朝日カルチャーセンターの新聞広告で 「コーチング」という言葉を見つけました。 カルチャースクールに通い始めた八起さん。 そして、運命の2回目の講座で、講師がこう言いました。 「コーチングを専門にして、 1対1でコーチをする職業があるんだよ」 その瞬間── 「あ、私それになる」 恋愛の悩みはどこかへ消えていました。 3.高校時代から繋がっていた、見えない糸 説明会で提示された会社名は「コーチ21」。 スクリーンに映し出された社長の名前を見て、 八起さんは息を呑みました。 「伊藤 守」 高校時代、繰り返し読んでいた本の著者。 あの伊藤 守さんが作った会社。 「絶対間違いない」 働いて貯めたお金、 約70万円を迷わず即申し込み。 福岡から電話会議システムという 当時の最新の技術を使って、 スクールに通い始めました。 4.「自由」という言葉がポロッと出た瞬間 八起さんの口から、何度も出てくる言葉があります。 「自由」と「納得」 小さい頃から、制約されることが苦しかった。 納得しないと前に進めない。 そんな変屈な自分でも、 コーチングは受け入れてくれました。 押し付けない。 教えるというスタンスを貫かない。 自分に考えさせる。 自分に気づかせる。 「自由に、自分のペースで成長ができる。 そんな変屈な私でも やっていけるっていう確信しかなかった」 2005年1月2日。開業届を提出。 それから22年間、八起さんのコーチング人生が始まります。 5.売上は好調。なのに、心は地獄だった。 「クライアントは目標を達成していく。 でも、私には、それがハリボテにしか見えなかった」 八起さんがそう語る時、 その声には今でも当時の苦悩が滲んでいました。 35歳で育児休暇から復帰した彼女が飛び込んだのは、 いわゆる「稼げる系コーチングスクール」。 売る方法は完璧に教えてくれる。 実際、売上は順調に伸びていきました。 でも、提供するコーチングの質は「ズタボロ」。 目先の目標達成だけを追いかけ、 クライアントの本当に大切な価値観、 腹の底にある想いには触れることができない。 自分が良いコーチングができていないことを、 誰よりも自分自身が分かっていたのです。 「良くないものを売り続ける苦痛が、きつすぎた」 6.「計画的育児休暇」の5年間 30歳から35歳まで丸5年間、 仕事を完全にストップして育児に専念すること。 「保育園に預けるという発想を持っていなかった」と笑う彼女ですが、 その5年間は単なる休息ではありませんでした。 「毎日トライアスロンをやっているみたい」 自分の限界を突破し続ける日々。 3人の子どもを育てながら、 彼女は"プロの専業主婦"として、 自分と向き合い続けていたのです。 7.技術を取り戻す――そして、仲間を救う 稼げる系スクールを離れた八起さんは、 コーチングのスーパービジョン練習会に通い、 徹底的に自分の技術を立て直しました。 すると、不思議なことが起こります。 かつてのスクール仲間たちが、 次々と彼女に相談を持ちかけてきたのです。 「コーチングができない」 「クライアントからクレームが来た」 「キャンセルされてしまった」 困っている人たちが目の前にいる。 そして、コーチングの契約をもらえるということは、 それ自体が奇跡のようなことだと彼女は考えていました。 その奇跡が、技術不足によって壊れていくのを、 業界の一人として放っておけなかった。 恐る恐る始めたコーチング指導。 でも、彼女が教えた人たちは、 どんどんコーチングができるようになっていきました。 「私、うまいじゃん」――その瞬間、新しい道が開けたのです。 8.感覚ではなく、エビデンスで伝える 八起さんのコーチング指導には、明確な哲学があります。 「感覚で伝えない」 セッションの文字起こしを行い、 エビデンスを示しながら解説する。 「ここの関わりが良かった」 「この質問はクローズドになっていて 相手を追い詰めている」―― 黒板に書くように、 見える化し、 スキルとして伝えていく。 でも同時に、こうも言います。 「それは私の主観であって、 唯一の答えではない」 極めて冷静に、理論的に。 でも、クライアント一人一人の心境に寄り添いながら。 9.「労働者」として生きる幸せ 今、八起さんは3つの柱で活動しています。 1o1のコーチング、 コーチング技術指導、 そして企業研修。 彼女が目指すのは 途方もない成功ではありません。 「もっと自由に遊びたい。 真面目に楽しみたいんです」 等身大。 無理に大きく見せない。 それは夏目漱石の言葉 「則天去私(天に則り、私を去る)」にも通じる、 彼女のコーチング哲学そのものでした。 八起さんの人生には、 自分らしく生きるためのヒントが詰まっています。
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