1.ティンカートイ・テスト(Tinkertoy Test:TTT)
・成人の遂行機能の評価課題
・玩具を使う自由構成課題で,複雑な言語教示を要しない,負荷が少ない,長い時間を要しない,楽しんで取り組める
2.小児の遂行機能と年齢・性別・言語能力や視覚構成能力との関連
・幼・保育園に通園中の定型発達の小児74名(男35,女39名)平均年齢(標準偏差)は4.5 (1.2)歳,範囲は2歳代~7歳代。小児に負担のない課題を用いた。
・色と形の異なる50ピースの部品による自由構成課題で,「ここにあるものをできるだけたくさん使って好きなものを作ってください」と教示した。
・定型発達小児の年齢別合計得点に有意差はなく男児は有意に高かった〔t(72)=5.04, P<0.001〕。小児のTTT合計得点は健常成人〔7.8(2.0)点: Lezak 1995〕と大差なく,また年齢別の違いもなく,遂行機能は早期に発達することが示唆される(Dia mond 1991,Welshら 1991)。未来を指向した遂行制御,あるいはより高次の遂行機能はさらに高い年齢で出現する可能性があるが、得点に反映されなかったことも考えられる。
・年齢の高い小児ほど,構成物の具体性やまとまり,美的な点などは優っており,目標指向性の高さを示していた。
3.脳の男女差
・大脳半球機能の特殊化と性差は議論が多いが,成人の神経心理学的研究から、概して,男性は視空間性課題,女性は言語性課題に優れるとされる(Harshamannら 1983,Maccobyら 1974)。小児でも男の方が視空間的課題の優位(Kernsら 1991, McGuinessら 1991)。
・遂行機能(大脳半球前方)は言語能力(左半球 後方)や視覚構成能力(右半球後方)とは独立して発達する可能性が示唆される
4.遂行機能と神経発達と発達障害の関連を調べる実験
・定型発達の小児74名と,療育施設に通園または3歳児発達健診を受診した発達障害のある小児41名。(発達障害は男児31名,女児10名。 平均年齢は4.1歳,範囲は2歳代 ~8歳代。)診断名(一部重複)の内訳は, 知的能力障害(intellectual disability:ID)15名,言 語症(language disorder:LD)20名,注意欠如・多 動症(attention-deficit hyperactivity disorder:ADHD) 8名,自閉スペクトラム症(autism spectrum disor der:ASD)17名。
・全小児を神経発達に関連 する要因で分類し,各要因の影響力を数量化理論で分析。
・TTTの各下位項目の得点 別出現頻度と,課題の構成過程で観察された誤りの種類別出現頻度を定型発達と発達障害の小児で比較。
・発達障害の小児の各年齢ごとのTTT合計得点に有意差はなかった〔F(4, 34)= 2.17, n.s.〕が,年齢に伴って高くなる傾向がみられた。
・性別間でのTTT合計得点に差はなかった〔t (39)=0.62, n.s.〕。
・TTT合計得点と,月齢,絵画 語い検査評価点,大脇式知能検査IQ得点との間に有意な相関はなかった。
・定型発達と発達障害の小児を比較すると,定型発達の小児のTTT合計得点が全体,4歳代,男児で有意に高かった。
・遂行機能の発現には4歳以降の神経発達が必要と思われる。
・発達障害では,IDは神経発達の全般的な遅滞,ASDは神経発達の局所的な遅滞や偏向の 強さが遂行機能の発達に影響した可能性が示唆される。ADHDは神経発達の遅滞や偏向が限定的で影響が小さかったと考えられる。
・左手利きには遺伝要因以外に,左大脳半球の遅滞の強さに伴う〝病的な 左手利き〟(pathological left-handedness)の存在が, また性差には視覚構成能力の男児の優位性が反映された可能性がある。
・発達障害の特徴として,目標の設定,複雑さの構築,自己修正の各困難さ,そして抑制の弱さが見られる。
【参考】
坂爪(2021)小児の遂行機能と発達障害,高次脳機能研究 第41巻第3号
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