「前に行くときは足を伸ばして、後ろに下がるときは足を曲げてね」
公園のブランコで、お父さんが優しい声で女の子に教えていました。
女の子は何も言わないけれど、なんだか嬉しそうでした。
雨が続いていた名古屋に、貴重な晴れ間が来たので、夕方少し歩いてみました。
色づき始めた柿。イガのついた栗。
青空に揺れるススキ。飛んでいくトンボ。
短い散歩なのに、あちこちに秋がありました。
歩いているうちに着いたのは、
子どもたちが幼稚園の頃によく遊んだ公園。
そのブランコを見ていたら、二十数年前を思い出しました。
うちの子どもたちは2歳違いで、下の子は12月生まれ。
結婚して愛知県に来た私の近くには、親も親戚も住んでいませんでした。
夫の帰りは遅く、モーレツサラリーマン時代。
冬に、小さな二人を、自分も風邪をひかずにお風呂に入れる方法を、
人に聞いたり調べたりしました。
聞いた人がみんな、誰かに手伝ってもらっていたので、
ちょっぴり凹んだことも。
0歳児が洗い場で待てる、スポンジの人型のベッド。
2歳児が湯船で安全に待てる補助付きの浮き輪。
上がったあと私がさっと羽織れるガウン。
道具に助けてもらいながらの毎日の奮闘でした。
ある日、全員裸になった瞬間、ピーピーピーと、灯油切れの非情な合図が!
ガウン一枚、寒い玄関に行き、凍えながら灯油を…。
二人目のお腹が大きくなってきた頃、
「あなた、これから大変よ」と声をかけてくれた人がいました。
大学生のお子さんがいて、とにかくお金が必要だという、幼稚園バスの運転手さんは、
『今がすごくいいときだよ』と、声をかけてくれました。
「これから大変よ」
「今がすごくいいときだよ」
今振り返ると、どちらも本当でした。
小さな子どもを守ることに、気持ちがずっと張っていたあの頃。
そんな時にかけてもらった言葉は、不思議と今も残っています。
ブランコに乗る親子を見かけただけで、
二十数年前のことをこんなに思い出すなんて。
色づく柿、イガ栗、ススキにトンボ。
秋をたっぷり味わえた、小さな夕方散歩でした。
あなたにも、ずっと心に残っている言葉がありますか?
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