夜長姫と耳男の心が一瞬通った様に感じた。ほんの一瞬。通ったと言うよりは、一瞬重なっただけだったのかもしれない。
この年月で、耳男だけが世間を知って行った。
バケモノを創りあげ、自信と力を手に入れて、見える世界を広げた。
心の土台も鍛えられ、落ち着いてしまった。成長してしまった。
それは良い事だと思う。
けれど、そこには一人取り残されている姫が居る。
子供は無邪気さ故の残酷さを持っている。
無邪気。それが全ての姫にとっては、耳男とのやり取りも、おままごとの様な物だったのでしょう。
人は多面性を持っている。その出方次第で、仏にも鬼にもなるのでしょう。
只ひたすらに可愛い夜長姫と、気付いてしまった耳男。なんて悲しい。