こんにちは。ライデン大学で研究をしている鈴木紘平と申します。私は主に政府の質や行政のパフォーマンスについて実証研究を行っています。ここでは、これまで英語の国際査読誌に発表した論文を、NotebookLMを使ってわかりやすく音声解説したものを紹介していきます。
今回解説するのは、カナダ・カールトン大学のデミルシオグル教授との共著で、2021年に学術誌 Governance に掲載された「公平性のみで十分か」という論文です。
この研究では、ヨーロッパの約5万7千人を対象に、行政の「公平性」が公共サービスの質にどのような影響を与えるかを分析しました。行政における公平性は一見すると望ましい価値のように思えますが、分析の結果、公平性の追求は必ずしも市民が感じるサービスの質を高めるとは限らないことが明らかになりました。特に、所得や学歴が低いといった社会経済的に不利な立場にある「脆弱な市民」にとっては、公平性が高いほど、むしろサービスの質を低く評価する傾向が確認されました。この傾向は教育分野で特に顕著であり、医療サービスでも同様の兆候が見られました。
なぜこのような逆効果が生じるのでしょうか。本研究が示唆するのは、画一的に「誰にでも同じ扱いをする」という形式的な公平性が、脆弱な市民に追加的な「行政的負担」を与えてしまう可能性です。具体的には、複雑な手続きやアクセスの難しさが、社会的に不利な人々にとってより大きな障壁となり、結果としてサービスの質を低く感じさせてしまうのです。
このことから私たちは、形式的平等だけでは不十分であり、個々の状況やニーズに応じた柔軟な対応、すなわち「実質的平等」への配慮が欠かせないと主張しています。真に質の高い公共サービスを実現するためには、社会的に不利な立場にある人々が直面する現実を政策や制度設計に反映させる必要があるのです。
本研究は、行政の質を高めるうえで、多様な市民、とりわけ脆弱な市民の視点や経験を重視する重要性を示しています。公平性は大切ですが、それだけでは十分ではなく、より包括的で現実に即した政策が求められることを強調しています。