詩と言葉の美しさをお伝えする「詩と朗読 poetry night」第126夜は中原中也「蜻蛉に寄す」。スキマ時間に聴いていただければ幸いです。
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「蜻蛉に寄す」 中原中也
あんまり晴れてる 秋の空
赤い蜻蛉が 飛んでゐる
淡い夕陽を 浴びながら
僕は野原に 立つてゐる
遠くに工場の 煙突が
夕陽にかすんで みえてゐる
大きな溜息 一つついて
僕は蹲んで 石を拾ふ
その石くれの 冷たさが
漸く手中で ぬくもると
僕は放して 今度は草を
夕陽を浴びてる 草を抜く
抜かれた草は 土の上で
ほのかほのかに 萎えてゆく
遠くに工場の 煙突は
夕陽に霞んで みえてゐる
(詩集『在りし日の歌』より)
※読み仮名
蹲んで…しゃがんで
漸く…ようやく
放して…ほかして
※参考文献
『汚れつちまった悲しみに……』(中原中也詩集/集英社文庫)収録
「解説―伝説の衣裳を脱いだ中也(新保祐司)
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