今年の漢字は、熊🐻だそうで…。
この物語の時代、人間と熊の間にはそれなりに明確な「境界」があったはずです。街の荒物屋の主人は境界を越えることなく、小十郎のような猟師が命懸けで境界を越えて山に入り、熊と対峙していました。
しかし現代、かつて緩衝帯となっていた里山の崩壊や、木の実等の餌の枯渇(気候変動が原因となっている場合も有)、街で食べる事を覚えさせてしまった事のように、熊が街に出てきやすくなった原因は、人間の行動にもあるようです。
数々の事件を思えば、安全確保が最優先であることは間違いないけど、ただ熊を排除するだけではなく、「なぜ彼らがそこに来ざるを得なかったのか」という背景に目を向けて、この物語に込められているような、全ての命への慈しみを誰もが持てたら良いのに…と思います。熊の脅威に晒されていない地域に住んでいる私がこんな事言うのは、綺麗事過ぎて反感買うかもしれないけど…。
私としては、山の中の描写も好きです。
山が霧か雲を吸ったり吐いたりしているとか、青黒いトンネルの中を行くようとか、そこら中が花が咲いたように日光が落ちているとか…✨
母子の熊のシーンでクロモジの香りがするのも好き。
クロモジって、爪楊枝に使われる良い香りの木です。爪楊枝使うたび、あのシーンを思い出しそうです。
#朗読 #青空文庫 #宮沢賢治