私がAI音楽に出会った頃、多くの人はこう言っていた。
「ボタン一つで曲ができるんでしょ?」
間違ってはいない。
だがそれは、古文を
「いとをかしを覚える科目でしょ?」
と言うのと少し似ていた。
たしかに曲はできる。
けれど本当に面白いのはそこではない。
AI音楽を始めたばかりの頃、私はプロンプトを呪文のように並べていた。
ロック。バラード。
ピアノ。感動。
エモい。泣ける。
すると曲はできる。
だがなぜか心は動かなかった。
ある日、私は気づいた。
AIは音楽を作っているのではない。
感情を翻訳しているのだと。
たとえば
「ありがとう」という言葉。
そのありがとうにも種類がある。
助けてもらったありがとう。
別れ際のありがとう。
もう会えない人へのありがとう。
照れ隠しのありがとう。
同じ5文字なのに全部違う。
人間同士なら空気で伝わる。
でもAIには伝わらない。
だから私たちは言葉を探す。
「照れくさい感謝」
「夕暮れの帰り道」
「少し笑いながら泣いている感じ」
「もう戻れない日々への愛着。
するとAIは突然、こちらの心を理解したような曲を返してくる。
不思議だった。ただのアプリなのに。
感情を持たないはずなのに。
それでも
自分の中にあった言葉にならない何かを音にしてくれる確かさがそこにある。
AI音楽は作曲ソフトではない。
私は最近そう思う。
これは感情の翻訳機だ。
自分でも名前をつけられなかった気持ちを探す装置。
ある人は亡くなった愛犬の歌を作る。
ある人は子どもへの応援歌を作る。
ある人は挑戦する仲間のテーマソングを作る。
その時AIは主役ではない。
主役はいつも人間だ。
昔は曲を作れる人は限られていた。
楽譜を書ける人。
コードを知っている人。
楽器を弾ける人。
けれど今は違う。
歌えなくてもいい。
弾けなくてもいい。
音楽理論がわからなくてもいい。
まずは伝えたい気持ちがあればいい。
私は看護師として多くの人と出会ってきた。
人生の終わりを見つめる人。
病気と向き合う人。
大切な人を失った人。
そんな人たちの話を聞いていると、いつも思う。
人は存外、自分の気持ちを言葉にできない。
だからAI音楽が生まれた時、
私は少しだけ驚いた。
これは音楽の技術革新ではなく、
感情表現の民主化なのかもしれないと。
古文が、千年前の誰かが先に気持ちに名前をつけてくれていた学問だとしたら、
AI音楽は
今ここにいる誰かの気持ちに、
まだ存在しないメロディーで名前をつける技術なのかもしれない。
だから私は今日も曲を作る。
再生回数のためでもなく
バズるためでもない。
誰か一人の心の中にある
まだ言葉になっていない物語を
歌に変えるために。
『FIVE&TEN』
帰り道の5分。
駐車場の10分。
忙しい毎日の中で、
いつの間にか特別になっていた時間。
仕事もある。
家庭もある。
やるべきことだってたくさんある。
それなのに
その人の声を聞くためなら
不思議と時間を作れてしまう。
特別な話をするわけじゃない。
今日あったことを話して、
笑って、
少し元気をもらう。
ただそれだけ。
だけど気づけば
その時間を待っている自分がいた。
「今度会ってみる?」
その一言で
いつもの日常が少しだけ違って見えた。
大人になって忘れていた
誰かを待つ気持ち。
そんな物語を歌った
K-POP × Jazz Pop × City Pop。
【歌詞】
平日はいつも
予定で埋まっている
通知ばかりが増えていく
iPhoneを見ながら
気づけば今日も
動き続けていた
こんな毎日が
当たり前だと思っていた
穏やかな夕食も
決して悪くはないけれど
いつからだろう
今日あったことを
誰かに話さなくなったのは
そんな時だった
君から届いた
1通のLINE
特別な内容じゃない
大きな出来事でもない
少し笑って
少し聞いて
少し元気になる
ただそれだけ
忙しいはずなのに
気づけば時間を探している
帰り道の5分
駐輪場の10分
君の声を聞くために
今日もまた
予定を少しずらしてしまう
会いたいとか
そんなことじゃない
ただ
もう少しだけ
話していたかった
電話の向こうの君は
いつも自然体で
だからこそ
心地よかった
ある日 君が言った
「こんど会ってみる?」
その瞬間
なぜか言葉が出なかった
何も変わっていないはずなのに
何かが変わった気がした
もしかして
君も同じだったのかな
そんなことを考えて
眠れなくなった
忙しい毎日の中に
こんな時間があるなんて
知らなかった
誰かを待つことも
電話を楽しみにすることも
少しだけ胸が高鳴ることも
ずっと忘れていたから
約束の日までは
まだ少しあるのに
今日の空は
なぜか明るく見える
君は今
どんな顔をしているんだろう
そんなことを考えながら
また日常へ戻っていく
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