こんにちは。盛典です。
今回は、音声作品『ひとつはちすに』で、なぜ朗読、平家琵琶、薩摩琵琶という三つの表現を一つの作品に入れたのか、お話しします。
この作品は、『平家物語』巻第九「小宰相」をもとにしていますが、冒頭に物語の語り手として境の聖という存在が登場します。平家物語に登場しない架空の人物です。聖はある男の願いを受けて、小宰相と通盛の話を語り始めるという展開になっています。
私がこの作品で描きたかったのは、出来事に纏わる登場人物たちの声なんですね。夫の死を知った小宰相の声、二人が結ばれるまでに見ていた景色から連想する声、そして通盛と小宰相を見つめるある男の願いを語る聖の声、そういった様々な声を立ち上げるということを、ひとりでやってみたかったんですね。登場人物の声、そして琵琶の演奏も含めて私が全てひとりで行っています。物語の前半は平家琵琶を用いて表現しているんですが、後半は薩摩琵琶を用いた表現にしていまして、ふたつの琵琶で時代や場面の転換を行っているんですね。
小宰相が海へむかう場面で語られる曲は、平曲『小宰相』といいます、平曲というのは平家琵琶の伴奏で平家物語を語るものです。平家琵琶は平家物語を語るための琵琶なんですね。基本的に他の曲は演奏しません。伝わる処にもよりますが、平曲は約200曲近くあると言われています。小宰相も一曲を全て語ると一時間以上かかってしまうので、その中から海へ向かう場面の数分をところを今回の作品に収録しています。
そして後半に登場する薩摩琵琶です。薩摩琵琶も様々な種類がありますが、その中でも古い歴史を持つ正派という流派、四つの絃に四つの柱がある薩摩琵琶の演奏を入れています。正派も様々な表現のかたちがあります。伝わる場所、教える先生によってさまざまな形が息づいているんですけれども、私は東京の須田誠舟先生の門下ですので、須田先生が伝えている表現の方法で語っています。今回、小宰相という曲を自分で作りました。といっても平曲の小宰相から詞章(言葉)を組み合わせて、師匠から学んでいる歌い方を当てて行ったので厳密に作詞作曲というものではありません。長く伝わってきた言葉や音を組み合わせてひとつの曲で表現したという形です。
ということで、朗読と平家琵琶と薩摩琵琶という三つの音によって、様々な声と時間が描かれているという。いま聞こえている声が、誰のいる場所から届いているのか。その声によって小宰相の姿や、時間がどのように変わって見えるのか。そんなことを感じながら聴いていただけたらと思います。
音声作品『ひとつはちすに』は、2026年7月27日発売予定です。全10トラック、約39分。小さなA5判の冊子と、テキスト動画のURLをセットでお届けします。詳しい内容は、概要欄にある盛典のウェブサイトからご覧いただければと思います。
今日も最後までお聴きいただき、ありがとうございました。盛典でした。