題名
鉢の木
(和歌)駒とめて 袖うち払う かげもなし 佐野のわたりの冬の夕暮れ
雪がもう)に似て 飛んで散乱
人は羽毛を着て 立って徘徊す
沙門(しゃもん) 宿を借る かくれびとの 家
一夜 囲炉裏をかこんで 清談めぐる
貧しき住まいは たきぎ無く 鉢の木を焚く
真情 粟(あわ)を炊いて 共にはべる
櫃(ひつ)には 兜をおさめて 古色を存し
槍(やり)を長押(なげし)に掛けて 埃をとどめず
幾たびか名を問いて 初めて答えあり
知り得たり 往年 文武の人たるを
他日 関東に軍令伝う
果たせるかな 痩せ馬を 馳せて 先駆けをなす