1.強迫症の概略
特徴:不安の対象に対して繰り返し生じる思考(強迫観念)と行動(強迫行為)そのものがさらに不安を増大し,著しい機能障害を来す
症状:不潔恐怖に伴う洗浄強迫や加害不安や過失不安に伴う確認強迫のほか,物の位置の対称性や文章の正確性へのこだわり,幸運,不運な数へのこだわり,無意味な行動の反復,性的・宗教的な思考へのとらわれなど,非常に多様
通常患者は自分の思考や行動が不合理的で過剰であることを自覚している
・生涯有病率約2%前後。10代での若年発症が多く,治療抵抗性が強く長期の罹病に至り,学業,就労など 社会機能に多大な影響が生じやすい
・発症要因:セロトニンの調節異常によって前頭葉や基底核の機能に異常が生じているのではないかという仮説。
・DSM-5では強迫関連症群という新しいカテゴリーの中核疾患
2.薬物療法について
・第1選択のSSRIでも十分な改善が得られない患者が少なくない
・clomipramineへの切り替え・抗精神病薬付加療法、認知行動療法が推奨
・第1治療としてSSRIは等しく有効であること,精神療法としてはCBTが有効であること,治療抵抗性OCDに対してはaripiprazole, quetiapine, risperidone の追加による増強療法が有効であることが示された
3.曝露反応妨害法(ExposureandResponse Prevention : ERP)
不安神経症に対する認知行動療法
【目標】
患者が恐れている強迫観念は実体のない不合理なものであり,それにとらわれて行動や生活に支障が出ていることについて患者の自覚が強まるように心がける.そして患者本人が自分の症状を理解し,図式出来るようになること
【心理教育とケースフォーミュレーション】
・強迫行為は一時的には不安を軽減しても繰り返すことにより強迫観念や不安はむしろ強まり,強迫行為もさらに増えていくというOCD特有の症状メカニズムについて説明
・一日の生活スケジュールを記載してもらい,生活に強迫症状がどのような影響を与えているかについての理解を深める.
【治療機序】
患者が強迫観念と不安や恐怖の出現を恐れ回避している刺激状況に, あえて曝し(曝露),その時に不安が高まってもそれを無理に抑え込むための強迫行為をとらず(反応妨害)にいると,時間経過につれて不安が自然に収まってくることを繰り返し体験することで,それまでの不適切な不安の学習を解除する
① 具体的な不安の対象を階層化した不安階層表をもとに, 中等度の不安を起こす刺激状況から開始し段階的に強い刺激への曝露する
② ホームワーク
→ 強迫観念が徐々に弱まり,強迫行為やそれに伴う生活障害を解消
【参考文献】
中尾(2021)うつ病・不安症の理解と治療, 福岡医誌 112(1):13―22
【ベストコメント】
便器をなめるか、ヒロさんの足の裏をなめるか…
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