世界のトラックメーカー業界は、主に貨物輸送や建設用途の中型・大型トラックを製造・販売する数百億ドル規模の巨大市場です。経済成長や物流需要増大を背景に緩やかな成長を続けており、重トラック市場は2024年から2029年にかけて年平均成長率(CAGR)5%強で拡大する見込みです。乗用車部門とは異なり、車両販売に加え、アフターサービスや金融サービスを提供する「輸送ソリューション提供業」へとビジネスモデルが変化しています。
特に、電動化(電気トラックや燃料電池トラック)コネクテッド(通信接続)技術の導入が加速しています。コネクテッドサービスでは、車両位置追跡、運行管理、予防整備、最適経路提案といったデータ活用型サービスが普及し、メーカーの新たな収益源となりつつあります。また、「X as a Service」モデルとして、トラックのサブスクリプションやリース、稼働率保証サービスなど、「所有から利用へ」のシフトが進んでいます。
競争環境では、企業の統合・提携や事業再編が活発化しています。ドイツのダイムラー社(旧ダイムラーAG)は商用車部門を「ダイムラー・トラック」としてスピンオフ上場し、事業の独立性を高めました。フォルクスワーゲン(VW)グループ傘下のトラトンは米国ナビスター社を完全買収し、グローバルな市場基盤を確立しています。日本勢では、日野自動車と三菱ふそうトラック・バスが2026年を目途に経営統合を目指す計画が進行中で、トヨタとダイムラーという競合する親会社同士の異例の提携となります。ボルボ・グループといすゞ自動車の資本業務提携や、中国重汽と独MAN社の提携拡大など、排出ガス規制強化や電動化対応を効率的に進めるためのグローバルな提携が加速しています。
主要プレーヤーとしては、ダイムラー・トラック(世界首位級、EV・燃料電池車・自動運転に注力)、ボルボ・グループ(電動化で先行、コネクテッドサービスに強み)、トラトン・グループ(VW傘下、グローバル展開と電動化・自動運転投資)、パッカー(北米プレミアムブランド、高収益性)、イベコ・グループ(天然ガス車に強み、独自電動トラックを強化)などが挙げられます。日本メーカーでは、いすゞ自動車(ディーゼル技術、アジア市場、トヨタ・ボルボと提携)、日野自動車(エンジン不正問題からの再建、ふそうとの統合)、三菱ふそうトラック・バス(ダイムラー傘下、eキャンター先行投入)、UDトラックス(いすゞ傘下で再編)が主要です。
また、中国市場は巨大で、一汽(解放)、東風汽車、中国重汽(シノトラック)などが国内で高いシェアを持ち、海外輸出も加速しています。韓国の現代自動車は燃料電池トラックで世界をリードし、インドのタタ・モーターズは国内EV化を先導しています。テスラ社やニコラ社といった米国発の新興企業も電動大型トラック市場に参入していますが、量産やアフターサービスで既存大手メーカーとの競合・協業が続いています。
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