# 「キスの香り」の秘密〜動物性香料が呼び覚ます人間の根源的エネルギー〜
奄美大島への出張から戻り、ようやく日常の平穏を取り戻しつつあります。心身ともに落ち着きを取り戻す中で、先日試作した「キスの香り」について、とても面白い発見があったのでお話ししたいと思います。
この「キスの香り」は、元々金運アップを目指して試作を重ねる中で生まれた香りの一つです。ですが、ある時、これを使っている瞑想仲間のディーパちゃんに試してもらったところ、彼女の反応は「にゃんにゃん」となるような、非常に喜ばしく、そして少しエロティックで情動的な、普段とは違う反応だったんですね。
顧問の先生に見てもらったところ、「これは金運の香りではなく、キスをしたくなる香りではないか」という指摘があり、仮でその名前をつけています。
### ムスクとシベット、その決定的な違い
この「キスの香り」には、主要な要素として動物性香料の一つである**シベット(霊猫香)**を使っています。シベットは、猫ちゃんのへその近くにある香りの袋(香嚢)から採取されるものです。
動物性香料の代表格としては他に**ムスク(麝香)**があります。ムスクは鹿の香嚢から得られ、現在はワシントン条約により取引が厳しく制限されており、昔から入ってきたものが残っているのみで大変貴重です。
これまで長年、私はこれらの動物性香料を扱ってきましたが、ムスクとシベットは明らかに違う感覚をもたらすと思っていました。ムスクはどこか高貴で純粋なものを感じさせるのに対し、シベットはもう少し周波数が異なり、にゃんにゃんというか、エロスとも言える部分に訴えかける感じがするのです。
### 中世の文献が語る、香りの深淵
この体感的な違いについて、先日少し調べてみたところ、興味深い中世の文書に行き当たりました。その文書には、動物性香料の作用について以下のように記されていたのです。
* **ムスク:** 生命の火を再燃させる、つまり生命の火をもう一度灯す作用がある。
* **シベット:** 官能と情動の解放がある。
* **龍涎香:** 心の奥の沈黙を温め、蘇らせる力がある。
まさに、これは私が体感していた感覚と完全に一致していました。ムスクは純粋な生命力を再点火するような感覚、シベットは官能や情動といった部分から生命力を力づけてくれる感覚。この発見は、長年の自分の感覚が過去の叡智と繋がったようで、大変嬉しかったですね。
現代では、ムスクが使えなくなった際の代替品として、シベットが「ほぼ同じ作用を持つ」として扱われることもありますが、この中世の知恵や、私たちの体感が示すように、この二つは全く異なる周波数で、人間に作用していると言えるでしょう。
### 植物と動物:天と地のエネルギー
現代のアロマセラピーは、植物性香料が主流です。しかし、古代の知恵によると、香りの世界には植物だけでは届かない領域があります。
当時の人々は、植物が天や太陽の霊気を宿し、**外側のエネルギー(つまり天)をクリアリング**する力を持つと考えていました。
一方、**動物性香料**は、地や呼吸、体温といった**地の記憶**を持っており、**人の根源的な部分、すなわち肉体や本能の層に響く**とされていたのです。植物性の香りだけでは、肉体や本能といった内側の層まで届かないと考えられていたようです。
動物性香料は、人の根源的な力を動かす作用を持っています。シベットが情動を解き放し、ムスクが生命の火を再点火するように、これらが植物の持つ天のエネルギーと交わることで、初めて人の奥底の力が外側へと広がり、香りの世界が完成すると言えるでしょう。
### 変容の象徴、龍涎香
特に龍涎香は、動物性香料の中でも特別な地位を占めています。海で生まれ、クジラという巨大な生命から排出され、長い年月をかけて海の光と波で熟成される龍涎香は、錬金術的には**変容の象徴**とされていました。
これは、人間の意識を、動物的な「地」の状態から、「霊」のレベルへ、つまりエネルギーをより高い次元へと引き上げる力を持つとされていたからです。
### 豊かさを探求する喜び
今回、試作の香りがもたらした人々の反応や、古い文献の発見を通して、自分の体感が過去の叡智と繋がるという、非常に豊かな時間を過ごすことができました。
大切なのは、誰かの言葉を鵜呑みにするのではなく、「この言葉の背景には、過去の人々がどのような感覚を抱いていたのだろうか」という視点を持って、自分の体感と照らし合わせることです。この探求のプロセスこそが、私にとって何よりの喜びであり、豊かさです。
これからの時代は、人からの評価に関わらず、自分が楽しいと思えること、豊かになれることを追求し、その喜びが周囲に自然と溢れ出していくことが大切だと感じています。この奥深い香りの感覚の世界を、これからも皆さんと一緒に楽しんでいきたいと思っています。 #龍涎香
#香り #アロマ