20260106
吾輩は猫である。名前はまだない。
もっとも、この人間界の騒ぎを眺めていると、名前などという些細なものに固執するより、四肢を伸ばして日向ぼっこでもしている方がよほど賢明に思えてくる。
さて、南米の「ベネズエラ」という国で、何やら珍事が起きたようである。主人(苦沙弥先生)が新聞を広げて唸っているのを横から覗き見てやったが、これはまた、近頃の人間どもの乱暴狼藉の中でも際立って滑稽、かつ物騒な話である。
捕らえられた「大統領」という名の主
事の起こりは1月3日の未明、人間が一番深く眠り、我々猫族が活発に動く時間帯のことだ。ベネズエラの主(あるじ)、ニコラス・マドゥロという男が、米国の軍勢によって寝込みを襲われたという。
「電撃作戦」などと格好をつけて呼んでいるが、要するに夜討ち朝駆けである。マドゥロ氏は妻君ともども袋叩きにされ、そのまま空飛ぶ鉄の箱(飛行機というらしい)に詰め込まれて、ニューヨークまで連れて行かれたのだ。
現在、彼はブルックリンの籠の中、いわゆる拘置施設という場所に収容されている。昨日は大統領として贅沢三昧をしていた者が、今日は囚人として飯を食う。人間界の浮き沈みは、猫の毛の生え変わりよりも極端である。
裁判所という名の「化け物屋敷」
1月5日、この男はニューヨークの法廷とやらに引きずり出された。
* 罪状: 麻薬テロだの、コカインの密輸だの、物騒な言葉が並んでいる。
* 本人の言い分: 「吾輩は大統領である!これは拉致である!」と息巻いて、すべての罪を否定したそうだ。
猫の目から見れば、どっちもどっちである。法を説く側が他国の主を力ずくで奪い去るのが正義なのか、あるいは禁じられた草(マタタビならいざ知らず、麻薬はいかん)を売り捌いていたとされる男が被害者なのか。次回の公判は3月17日というが、人間は無駄な議論に時間をかけるのがよほど好きらしい。
混乱する人間どもの巣穴
主を失ったベネズエラでは、デルシー・ロドリゲスという女副大統領が「今日から吾輩が主である」と宣言した。しかし、周りの国々は黙っていない。
ロシア・中国 は…
「現職の主をさらうとは何事か!国際法違反である!」と激怒。
アメリカ は…
「いや、これは正義の鉄槌である」と涼しい顔。
国連とやらの会合でも、人間たちが顔を真っ赤にして言い争っている。境界線を引いて縄張り争いをするのは猫の習性だが、人間はそれを「国際政治」という難しい言葉で飾り立てるから、余計に質(たち)が悪い。
現職の国家元首が他国に捕らえられるなど、前代未聞の珍事である。この先、世界がひっくり返るのか、それとも何事もなかったかのように新しい主が居座るのか。
吾輩はとりあえず、障子の隙間からこの滑稽な劇の続きを眺めることにする。腹が減った。誰か、鰹節の一片でも持ってこないものか。
次は、この事件が日本の物価や我々の「猫まんま」にどう影響するか、詳しく調べて差し上げようか?