静かな湖を思い浮かべてみてください。
風のない朝。
水面は鏡のように穏やかで、
空の青さや雲の姿を静かに映しています。
その景色を見ていると、
何も起きていないようでいて、
実は多くのものが存在していることに気づきます。
静けさ。
余白。
待つ時間。
見えない深さ。
私は時々、
そんな湖の水面を描いた絵本を思い出します。
そこには派手な出来事はありません。
けれど、
ページをめくるたびに、
静けさそのものが語りかけてくるのです。
声もまた、
それとよく似ているように思います。
私たちは声というと、
「話すこと」を思い浮かべます。
けれど本当は、
話していない時間もまた、
声の一部なのではないでしょうか。
音声配信を始めた頃、
私は沈黙を怖れていました。
間が空くと、
何か話さなければと思いました。
黙ってしまうと、
聴いている方が退屈するのではないか。
そう思っていたのです。
けれど続けていくうちに、
少しずつ気づきました。
言葉と言葉の間にも、
大切な時間があることに。
人は、
言葉を聞いた瞬間に
理解するのではありません。
受け取り、
味わい、
心の中で響かせながら、
少しずつ自分のものにしていきます。
そのためには、
静かな余白が必要です。
絵本の余白と同じように。
美しい絵本ほど、
すべてを説明しません。
語りすぎません。
余白を残します。
だからこそ、
読む人の想像力が広がり、
心の中に物語が生まれるのです。
声もまた、
同じなのかもしれません。
言葉を並べるだけではなく、
その言葉が着地する場所を残してあげること。
そのための沈黙。
そのための間。
そのための静けさ。
私はそれもまた、
声の大切な役割だと思うのです。
音楽にも休符があります。
休符があるからこそ、
音は美しく響きます。
もし休符がなければ、
音はただ流れ続けるだけで、
心に残りにくくなるでしょう。
人生も同じかもしれません。
働く時間があり、
休む時間がある。
話す時間があり、
聴く時間がある。
動く時間があり、
立ち止まる時間がある。
そのリズムがあるからこそ、
私たちは自分自身を
取り戻すことができます。
沈黙は
空白ではありません。
何もない時間でもありません。
そこには、
言葉にならない想いが流れています。
感謝。
祈り。
余韻。
慈しみ。
そうしたものは、
むしろ
沈黙の中にこそ宿るのかもしれません。
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