この公園はわたしにとって、特別な場所なのかもしれません。
急に過去を思い出して、複雑な思いがわいてきました。
K公園 その後
かつて
情念のように
吹き出していた
暮らしの
感情の
ゴミが一掃されると
下草は刈り込まれ
人の姿はぼやけ
朝の澄んだ光
木々の匂い
蘇った森
もう
夜の闇に紛れた喧騒も
行き場のないため息のかたまりも
愛と憎しみの果てしない会話さえ
薄まって
草が朝露をキラキラ降りこぼす
たとえ悲しみは無傷でも
強い力がみなぎる公園
わたしも一緒に新しくなりたくて
歩く
初めてのように
ひとあしひとあし
めり込ませながら
昨日まで捨てられていた
タバコの吸い殻
黄緑のスケルトンライター
情念の火種は
土が盛り上がって
呑みこんだんだ
きっと
K公園 1999年
下草が胸までつかえて
くるしい
青い汁が蒸れる
ぼうぼうの道を分け入るとき
踏み出す足ごとに
白い蛾が放射状に飛び散っていく
年に二、三度
作業着の男達がトラックの荷台に乗って来て
下草を刈り込むと
公園は妙によそよそしく美しい
立入禁止の札を心に立てながら
しばらく引いている とまた
めらめら伸び上がっていく
鎮めても
鎮めても
地面からは息が漏れ
樹々の枝が押し寄せる
卵が分割する
池の水が濁る
そうすると
急にひとびとはソワソワして
捨て始めるのだ
自転車
オートバイ
花火
弁当がら
シンナーの空缶
コミック本の卑猥なシーン
ジャンパーの片袖
わたしも
捨てられたものの烈しさにくらみながら
頭を掻回すぐにゃぐにゃのことば
時には尖った声にして
地面へ 叩きつける
草の上で
遊ぶ子供たち見守る大人たち
少年が釣りに熱中している
光の時
男女の影は歪み
叫びあう足音が土を蹴りくずす
闇の時
それでも
踏み入らずにはいられない
下草はもつれ
葉音は飽和し
飛び立つ鳥の群れ
水底が生臭くうごめく
K公園は
ひとが情念(こころ)を脱ぎ捨てる森
ひとの情念(こころ)をのみこむ森
もだえながら
深く堆積させていく
さっきまで確かに在った
ダンボールの仔猫
ひとみのうつろな若者のくつ
わたしがこぼした悪意さえ
絶え間なく草がはんしょくして
もう
見えない
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