「MDML」&「ROE」モデル
1.前提知識
①関係フレーム理論(RFT): 人が言語や認知を通じてどのように物事を関係付けるかを説明するもの。人々が言語の「関係(つながり)」を学び、その関係を使って思考や行動を導く方法を探る。
②関係フレーム反応:人間が言葉や概念を使って物事や出来事の関係性を理解し、反応する方法
③Crel(関係的手がかり)…物事や出来事の間にどのような関係があるかを示す手がかりのこと。「大きい」「小さい」「前」「後」などの言葉を使って物と物との関係を表す。
例)「リンゴはバナナより【大きい】」
④Cfunc(機能的手がかり)…物事や出来事がどのような機能や役割を持つかを示す手がかりのこと。物事がどのように使われるか、または何のためにあるのかを理解するのに役立つ。
例)「鍵で【ドアを開ける】」
2.HDML
関係フレーム理論を基に、複雑なデータ処理と学習を行うモデルとして発展。
特徴
階層的学習: データを階層的に処理して学習することで、より高度なパターンや特徴を捉える。
深層学習: 複数のレイヤーを持つニューラルネットワークを使用し、それぞれのレイヤーで異なるレベルの抽象度を持つ情報を処理する。
※ニューラルネットワーク=人間の脳の働きにインスパイアされて作られた計算モデル。画像認識や音声認識、言語処理など多くの分野で活用されている
関係の学習: RFTに基づいて、人がどのように情報を関係付けて理解するかをモデルに反映し、より自然なデータ処理を行う。
HDMLを使ってテキスト解析を行うとき、まず単語やフレーズを個別に解析し、それらの関係を理解し、最終的には文章全体の意味を捉える。
関係フレーム反応のCrelまたは関係づけという文脈手かがりを5水準と4次元で説明している。
① 相互的内包
② 関係フレームづけ
③ ネットワーク関係づけ
④ 関係の関係づけ
⑤関係ネットワークの関係づけ
1~5まで関係的に発達していく。
加えて
① 一貫性
② 複雑性
③ 派生性
④ 柔軟性
の関係フレーム反応の機能の変化を四つの次元で説明
【例】「人前で話せないのは自分が不安だからだ」
MDMLで解釈すると…
・複雑性の高い体験概念(complexity)としての自己
・複数の体験を社会に強化されてきた一貫性(coherence)が高い
・体験に対して一貫した反応を重複して派生性(derivation)が低い
・「概念としての自己」そのものが文脈の影響を受けにくく柔軟性(flexibility)が低い
と解釈する
3.ROEモデル(関係づけrelating,定位orienting,喚起evoking)
定位:周りにある情報の中から自分にとって重要なものを選び出す働き
喚起:特定の反応を引き起こすために、何かを思い出させたり感じさせたりする働き
・MDMLでは説明されていない言語刺激の機能(Cfunc)という文脈手かがりの影響を説明したモデル
・Implicit Relational Assessment Procedure(IRAP)と呼ばれる行動測定法(MDMLで説明されている関係フレーム反応の一貫性の変化を測定するプログラム課題)の研究結果から導かれた。
→ 人間の関係づけ反応は定位機能や喚起機能という言語刺激が持つ特性的な機能に影響を受けている(Barnes-Holmes et al.;2020)→ ROEモデルへ。
人間の反応に影響を与える「Cfunc」という文脈手かがりには…
① 定位機能
② 喚起機能
の二つの機能的な特性があり
「Crel」という文脈手かがりには
「関係づけの強さ」という機能的な特性がある。
人間の関係づけ反応は、その機能的な特性の強度の相互作用に影響されていると説明する。
【参考文献】
張・谷(2023)自己概念に対する関係フレーム理論からの理解と研究の展望,立命館人間科学研究 第46号
【ベストコメント】
仕入れると聞こえたのはシーエルと言ってたのですか?
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