1.児童虐待の近年の傾向
・全国232か所の児童相談所が対応した虐待の相談は214,843 件(2022年度)‐今日も増加中
・近年の傾向として、心理的虐待として警察から児相に「面前DV」の通告が強化
・一般市民が虐待を受けたと”思われる“子どもを見つけたときに児童相談所に通告・相談できるよう全国共通ダイヤル「189」の運用が開始
※ 児童虐待は,子どもの身体的・精神的な成長や発達に深刻な影響を与えるため,発生予防~早期発見・対応,子どもの保護や自立に至るまでの一貫した支援体制の構築が重視。
・児童虐待対発生リスクは低年齢時期に多い…6 歳未満児が38.9%(79,775件)で、子どもの低年齢時期に発生するリスクが相対的に高い傾向:2020年度(厚生労働省2021)
・厚生労働省が2003年から行ってきた調査では0歳児が死亡事例で最多。
2.地域子育て支援事業とは
子育て中の家庭をサポートするため自治体がする取り組み
① 地域子育て支援拠点事業
・乳幼児とその保護者が交流できる場の提供・育児相談や情報提供
・2007年に「地域子育て支援センター事業」と「つどいの広場事業」の再編・統合によって創設され,2022年時点の実施状況は全国で7,970か所(こども家庭庁2023)
・「少子化や核家族化の進行,地域社会の変化など, 子どもや子育てをめぐる環境が大きく変化する中で,家庭や地域における子育て機能の低下や子育て 中の親の孤独感や不安感の増大等に対応するため, 地域において子育て親子の交流等を促進する子育て支援拠点の設置を推進することにより,地域の子育て支援機能の充実を図り,子育ての不安感等を緩和 し,子どもの健やかな育ちを支援することを目的とする」(厚生労働省2014 地域子育て支援拠点事業実施要項).
② 利用者支援事業
子育てに関する相談や助言を行い必要な支援につなげる
③ 一時預かり事業
保護者の急な用事や体調不良時に短時間子どもを預かる
④ ファミリーサポートセンター事業
地域の子育て支援と子育て家庭をつなぎ相互援助を促進する
ひとり親家庭,経済的困窮家庭などに対しても,地域の中核的な拠点施設として開かれ,利用しやすく,身近に感じられる相談支援の場として
3.地域子育て支援拠点事業の背景にある事情4つ
①子育て家庭の孤立化
・子育て中の親の孤独感や不安感が増大し,社会的支援が必要とされることが様々な研究で指摘されてきた
・「ワンオペ育児」…日本に根強く残る保守的な性別役割分業。子育ての負担が女性(母親)に集中しやすい
・子育てをする親のニーズ…「子育てをしている親と知り合いたかった」「家族以外の人と交流する機会があまりなかった」「子育ての悩みや不安を話せる人がほしかった」など(子育てひろば全国連絡協議会 2015)
・母親は自分の育った市区町村以外で子育てをしている割合が高い‐親族や地縁関係に基づくインフォーマルな支援を得にくい母親ほど孤独感などが高まる傾向
②経済状況の変化と生活困窮
・1995年当時,3歳未満の子どもがいる母親の就業率はおよそ4人に1人の割合で、就労する母親よりも専業主婦の不安感や負担感が高い傾向を示す研究が発表されてきた。
→ 地域子育て支援センター事業の役割は「在宅育児支援」が重視
・令和になると若い現役世代の収入が伸び悩む…3歳未満児の母親の就業率は6割超え
→ 保育の需要が急増、就学前児童の保育所等利用率52.4%(保育所等関連状況取りまとめ令和5年4月1日 )なかでも1・2歳児の利用率は57.8%。【子どもが幼い時期から共働きが前提】 → 「在宅育児支援」 & 「共働き家庭も対象とした支援」に移行
・経済的格差で生活困窮…児童のいる世帯の半分以上は生活が「苦しい」(大変苦しい・やや苦しい),母子世帯ではその割合が75%に達する(厚生労働省2022 年国民生活 基礎調査の概況),2021年の日本の相対的貧困率は,子どもの貧困率11.5%,ひとり親世帯44.5%
※ 2018年に比べて低下も、OECD加盟国における比較では依然としてひとり親世帯の貧困率が高い状態にとどまっている
③ひとり親家庭のメンタルヘルス
一人で乳幼児を養育しているシングルマザーの群では11%の母親に「こころの不調(severe psychological distress)」がみられる(加藤ら2021)
④ 虐待予防・対応
妊娠期を含む早期の支援の必要性が高まり,市町村の母子保健の役割や,子育て支援事業との連携が重視される。
家庭の経済的困窮や母子家庭等の生活問題も,児童虐待の発生リスクを高める傾向
2003年の東京都が行った調査…都内の児童相談所が対応した虐待事例の家庭の特徴として,上位に「ひとり親家庭」「経済的困難」「孤立」(東京都福祉保健局2005).
・保育所の保護者への調査(中村2015)…所得が低い階層では育児ストレスを抱えやすく,そのストレスの発散方法として「ついついあたった」「ついつい叩いた」「厳しく叱った」という養育態度を示す傾向
【参考】
渡辺(2025)多様な課題に対応する地域子育て支援拠点事業の役割に関する研究, 日本福祉大学教育・心理学論集 第17号
【ベストコメント】
機能不全な一面は必ずと言っていいほどどの家庭には存在すると肯定した上で、排他的な言動に繋げないコミュニケーション。こっちの工夫がそれぞれで意識できたらいいんだろうな、と思えてきました。
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