うつ病治療に関する最近の知見
1. うつ病の薬が効くパターン
・急性期
・重症例
では安全な環境の確保とともに抗うつ薬を十分量,十分な期間,服用することが治療の基本 となる.
2.うつ病の薬が必ずしも有効でないパターン
軽症例(うつ病の多数)は…
・近年の研究でプラセボ対照試験、抗うつ薬の有効性は実証されていない
・アクチベーション(賦活)症候群
・自殺関連行動
・衝動的他害行動の増加など
抗うつ薬使用に随伴する問題も指摘されている。
「リスクベネフィット比が低いため初期治療としては推奨しない」(NICEガイドライン)と薬物療法が必ずしも治療の第一選択にならないことも指摘されている。
【各国のガイドラインやアルゴリズムで推奨されていること】
・支持的精神療法と心理教育(日本うつ病学会ガイドライン)
・支持的ケアや問題解決技法(WFSBPガイドライン)
・簡便なCBTカウンセリング(NICEガイドライン)
3.休めば治る?
休養・休息が症状の改善に有効であるかは,特に軽症例に関しては議論の余地があり,「不適切な休養や休 職は,患者の自己回復力を阻害し,病状の遷延や慢性化につながる」可能性(日本うつ病学会による治療ガイドライン)
4.国内外のうつ病に対する対一推奨治療
【うつ病学会(2012)】
軽症例…患者背景,病態の理解に努め,支持的精神療法と心理教育を行う。さらなるアプローチが必要な際は,新規抗うつ薬かCBT
中等症例…新規抗うつ薬・TCA/non-TCA・ECT
【TMAP (2008)】米国テキサス州の公共メンタルヘルスシステムにおいて、大うつ病性障害患者の治療のためのコンセンサス薬物アルゴリズム(治療の手順や指針)を開発し、その有効性を検証した大規模な研究プロジェクト
軽症例…エビデンスに基づいた精神療法が単独あるいは薬物療法と併用で考慮されるべき 毎日の運動,適切な栄養摂取,w-3脂肪酸,女性での葉酸,薬物ならばSSRI,ブプロピオン,ミルタザピン,SNRI
中等症例…SSRI,ブプロピオン,ミルタザピン SNRI(ベンラファキシン)
【WFSBP(2013)】世界生物学的精神医学会連盟
軽症例…注意深い観察(2週間程度)や運動,うつに関するパンフレットを渡す,支持的ケア,問題解決技法
中等症例…抗うつ薬±精神療法 心理社会的介入
【NICE(英国) 2007】英国国立医療技術評価機構
軽症例…薬物療法は初めの治療にリスクベネフィット比が低いため推奨しない,介入を希望しなければ注意深く様子観察し待つ,運動やうつ病についてのパンフレットを渡し指導,うつに焦点を当てた問題解決技法,簡単なCBT,カウンセリング,長期のCBTやIPTは推奨されない
中等症例…心理学的介入より前に抗うつ薬投与されるべき,社会的サポート・長期の構造化された心理学的介入(CBT)
【参考】
中尾智博(2021)うつ病・不安症の理解と治療,福岡医誌 112(1)
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