1.宗教認知科学(cognitive science of religion, CSR)とは
・認知科学や進化生物学の知見に依拠した宗教研究の一形態
①宗教は人間が普遍的に有する認知プロセスから生まれるとみなす
②その主張を理論として立て、実証的な手法によって検証を試みること
・既存の研究に比べて、心理学的な実験手法をはじめとしたさまざまな方法を用いて、宗教の研究を行う点に特色がある。
・1990年代にダン・スペルベルをはじめとする人類学の新たな流れに影響を受け、「認知」の観点から宗教を扱う理論を提唱した、E・トーマス・ローソン、ロバート・マコーリー、パスカル・ボイヤー、 ハーヴィー・ホワイトハウスらによってその原型が作られた。
・2000年代には一領域の確立のために拡大を試みる
・儀礼能力理論(ローソンとマコーリー)
・反直観的概念(ボイヤー)
・宗教性の二様態理論(ホワイトハウス)
いずれも宗教的観念が伝播する理由を人間の記憶や直観に求め、日常的な心理プロセスの延長として、宗教的観念も生まれるとみなしている。
実証的手法により「テスト可能」だと主張し、心理学的実験による検証を行ったことにより、宗教に対する新たな視点からアプローチする手法が確立された。
・宗教を諸要素に還元することで、宗教を他の社会や政治的文脈から独立した「sui generis(固有)」なものとみなす特別視を避け、より「科学的」に研究が行えると主張
・ヨーロッパ を中心に研究拠点が設けられ拡大、その過程で、進化生物学的観点も取り入れられた。
※進化心理学…人間には人類史の初期から受け継がれた心理メカニズムが共通して存在するという見解を中心する。
・遺伝的に継承される普遍的な心理メカニズムよりも、社会において非遺伝的に継承される文化の伝達や変容に着目する文化進化論的な研究も拡大
・心理学的実験と人類学的なフィールドワークの組み合わせや計量テキスト分析、データベース構築と分析、宗教のコンピューターシミュレーションなどが導入
・という2点がCSRの共通点とみなすことができる
2.エリアーデに対する批判
・上記の研究者らは宗教学者エリアーデに対するモダニスト的観点からの批判の中に自らを位置付けた。
・エリアーデは日米の宗教学において大きな影響力を有していたが、1990年代以降、相次いで批判された。
論点
①モダニスト的な立場(非還元主義および神学性を批判)
「宗教を他の社会や政治的文脈から独立した「sui generis(固有)」なものとみなすことは宗教を特別視することであり、そのような姿勢では研究自体が宗教となりかねない!」
②ポストモダニスト的な立場
3.日本における宗教認知科学
・日本国内においてはあまり知られておらず、その研究もほとんど見られない。心理学分野で少し発表が見られる。
・多くの研究者が CSRに最初に触れたのは、2010年の国際宗教学宗教史学会(IAHR)トロント大会
・継続して研究しているのは井上順孝と藤井修平の2名のみ
【井上】
・認知科学や進化生物学の理論や視点を幅広く参照しながら、これらの視点を用いて、既存の研究対象に新たな気づきがもたらされることを指摘
【藤井】
・主にCSRの理論やその背景となる諸分野の発展史を記述
【参考文献】
藤井(2024)宗教認知科学および宗教心理学の研究動向, 國學院大學学術情報リポジトリ
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