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 【発見!】神経細胞新生がうつ病の謎を解く

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1. 成体海馬神経細胞新生の発見の歴史 ・1850年以降にゴルジ,フィルヒョウ,カハールなどの中枢神経系の細胞組織学研究の発展により,ニューロンは細胞分裂を行わないことが示された。 ・成体脳では新たにニューロンは誕生しないと考えられていた。 ↓ 1963~1965年にかけてマサチューセッツ工科大学精神生理学研究室のAltmanが ・トリチウム(細胞分裂のマーカーとしてよく使われていた水素の放射性同位元素,分裂中の細胞にのみ取り込まれる)をラットに投与したところ,海馬歯状回の顆粒細胞層(granule cell layer:GCL)にトリチウムが取り込まれたニューロンの存在 ・顆粒細胞層下帯(subgranual zone:SGZ)に分裂している細胞の存在 をしめした。 ・しかし,あまりにも当時の定説とかけ離れていたために受け入れられず,Altmanの偉大な 発見は残念ながら忘れ去られてしまった。 ↓ 1990年代初頭、McEwenとGould,Cameronロックフェラー大学で ・成体脳の海馬以外の領域ではストレスにより神経細胞数が減少するが,海馬歯状回でのみ神経細胞数が減少しないことに気づいた。 ・さらにAltmanの論文に出会い,成体海馬歯状回で神経細胞新生が生じているために神経細胞数減少が代償されているのではないかと仮定し、1992~1993年にかけて そのことを実際に示し,Gould,Cameron,McEwen は成体海馬神経細胞新生の再発見者となる。 ・しかし,実は日本人が欧米に先んじて成体海馬神 経細胞新生を再発見していた…1991年,順天堂大学の石龍徳が,発達中のニューロンに特異的に発現しているpolysialylated neural cell adhesion molecule(PSA-NCAM)の抗体を用いた免疫染色で示していた。 2.核酸アナログ・BrdU ・分裂細胞である神経幹細胞のマーカーとして使用可能なものが,当時はトリチウムのみだったことが成体海馬神経細胞新生研究の発展を阻んだ。 ・トリチウムは放射性同位元素であるため使用に手間を要するうえに,免疫染色と同時に施行できない。トリチウム陽性細胞の性質について詳細な解析を施行できない。 そこで,ソーク研究所のGageが,すでに分裂細胞のマーカーとして開発されていた分裂中の細胞にのみ取り込まれる核酸アナログ・BrdUを神経幹細胞のマーカーとしての有用性を示した。さらに,1998年には余命1ヵ月ほどの難病患者の協力を得て,この患者にBrdUを投与し, 死後に脳切片を作成して免疫染色を行い,成人の海馬歯状回で確かに神経細胞新生が生じ ていることを確認した。 ↓ 成体海馬神経細胞新生研究が爆発的に発展し、基礎研究による知見が蓄積されている。 3.うつ病の神経細胞新生仮説 ・グルココルチコイド…ストレスを媒介するもっとも主要なホルモン ・うつ病患者で視床下部─下垂体─副腎皮質系が亢進する結果,グルココルチコイドの血中濃度は増加 ・うつ病患者の海馬体積が減少と,グルココルチコイド分泌が亢進するクッシング病で海馬体積が減少していることが知られていた。→ うつ病の人のグルココルチコイド血中濃度増加と海馬体積減少をつなぐ現象として,成体海馬神経細胞新生に注目が集まる。 ・1994年,グルココルチコイドが成体海馬神経細胞新生を抑制することが示される(CameronとGould)。 ・2000年 うつ病の治療である抗うつ薬と電気刺激(電気けいれん療法の動物モデル) がともに成体海馬神経細胞新生を増加させる(イエール大学 デュマン)。 ・2003年 成体マウス海馬歯状回の神経幹細胞を選択的に減少させたところ,うつ病様行動への抗うつ薬の効果が減弱した(コロンビア大学 ルネ・ヘン)。 → 成体海馬歯状回の神経幹細胞が実際にうつ病の病態や治療の作用機序において機能的な役割を有していることが示された。 ↓ ・うつ病の神経細胞新生仮説が信じられるようになり,現在まで多くの研究がなされている。 ・うつ病のリスク因子として注目されている、炎症と幼少期ストレスでも、成体海馬神経細胞新生を抑制することも,うつ病の神経細胞新生仮説を支持している。 4.うつ病の神経細胞新生仮説がいつまでも仮説である理由   うつ病の神経細胞新生仮説は多くの基礎研究が成されているが,いまだに「仮説」であり,この仮説に基づく新規治療・診断法はいまだに開発されていない。 【原因】 生きているヒトで海馬神経細胞新生を検出する方法がいまだに存在しない 現時点で海馬神経細胞新生を検出する唯一の手法はBrdUの免疫染色だが生きているヒトで行うのが不可能。 ・H-magnetic resonance spectroscopy(MRS)を用いた手法では、うまくいきそう打と思われたが多くの疑義が出され,他の研究室で再現できず否定。 ・2016年には陽電子放出断層撮影(positron emmision tomography:PET)を用いた成体海馬神経細胞新生検出の試みがあったが感度が低いと思われ,ヒトで使用するには感度の改善が困難なようである。 ・ほかにも色々試みられていえるが,残念ながら成体海馬神経細胞新生を検出可能な手法はいまだに開発されていない。 【参考】 林(2024)うつ病の神経細胞新生仮説を再考する, 日本生物学的精神医学会誌 35巻1号 【ベストコメント】 やっぱし、脳は受信機なのでは!? #脳神経 #脳科学 #脳 #ストレス #うつ #炎症 #神経 #公認心理師 #臨床心理士 #臨床心理学を
7月27日
コメント(2)
あきね🍁お母さんの行動分析学
ヒロさん!プロフィールが!超イイ感じです👍✨ かっくいーー😆💖
7月28日
いいね 1
hiro🦻【えんの木】
そう!?そうですか!?いやー、滲み出る魅力を感じてもらえて嬉しいです🤤
7月28日
いいね 1
コメントは
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