シングルケースデザイン(SCD)
1・介入による効果を検証するために必要なこと
・独立変数(介入)と従属変数(測定指標)の間の機能分析を行い因果関係を示す(Baer, Wolf, & Risley, 1968)。
・EBPで求められている科学的態度と一致する。
・対象者の行動を繰り返し測定し、対象者個人に異なる条件を適用する(個人内比較)ことで介入の有効性を評価する
2.シングルケースデザイン(SCD)
・同じ人に対して異なる条件のもとで行動を測定する。そのため対象者の診断名や介入パッケージにこだわることなく介入の有効性を検証できる(Kazdin, 2011)
・少人数であってもデータの内的妥当性を高めることが可能な実験デザインとして
①リバーサルデザイン(reversal design あるいはwithdrawal design)
・介入の有無を繰り返す(ベースライン→介入→ベースライン→介入…)
・行動が介入によって変化し、介入をやめると元に戻ることで因果関係が明確になる
・倫理的に介入の中止が難しいこともある
②マルチベースラインデザイン(multiple-baseline design)
・複数の対象(人物・行動・状況)に対して介入の時期をずらす
・他の対象者と比較することで効果を検証できる
③基準変更デザイン(changing criterion design)
・行動の目標値を段階的に変更しそれに応じて行動が変化するかを検証する
例)筋トレの回数を一週間ごとに増やしていく
・行動が基準に沿って変化すれば介入の効果があると判断できる
④条件交替デザイン(alternating-treatments design)
・複数の介入条件を短期間で交互に導入し、それぞれの効果を比較する
例)第1週では、外にでたら報酬をあげるが、第2週は外に出ても報酬がない。
・報酬を切り替えることで、どの報酬が最も効果的であるかを比較する。
・行動の変化が条件に即して起こるかを視覚的に分析できる
などがある (Barlow, Nock, & Hersen, 2009; 石井,2015; Kazdin, 2019; Tate et al., 2016)。
・少人数であっても独立変数と従属変数の間の因果関係を示した実践研究が増加すれば、実践現場においてもエビデンスが集積され、完成度の高い実践の体系化に貢献できる可能性がある。
3.シングルケースデザインができる条件と課題
・内的妥当性の高い実験デザインを実施できる条件
※内的妥当性…本当に介入によって変わっているのかどうか
①実践家が実験デザインの条件を満たすように、繰り返しの測定や複数の対象者間における測定などの機会を設定可能であること
②介入の導入や除去、変更が操作可能な場合
に限られている(Kazdin, 2011, p. 258)。
実際にはこの条件を満たすことは現状では極めて少ない。
・もし対象者を限定して条件を満たすことができたとしても、ごく一部の対象者に限られることになり、RCTの問題と同じように研究と臨床の乖離が生じる可能性がある。
【参考文献】
仁藤・奥田・川上・岡本・山本(2021)精神科臨床における応用行動分析学の実践と研究, 行動分析学研究 第35巻 第2号
【ベストコメント】
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