1.準実験デザイン(Kazdin 2011)
・条件変更を伴わない繰り返しの測定
・条件変更を伴う繰り返しの測定(ABデザイン)
・内的妥当性が高い実験デザイン(true experimental design)と、その対極にあるエピソード記述による事例報告(anecdotal case study)の中間にある実験デザイン
・介入の前後でそれぞれ1回測定を実施するpre-post測定…対象者の行動が変容したことを示せる点ではエピソードの記述による事例報告よりも望ましいが、介入の効果については検証することができない。
2.シングルケースデザイン実践を現場で行うことの難しさ
①繰り返しの測定
②複数の条件(ベースラインと介入)
③介入に伴う測定指標の十分な変化(marked change)
④複数の対象者
という要素が加わるほど独立変数の効果について妥当な推論を導くことが可能になり、実践家にとっては現実的な研究法となる。
だが多くの場合、限られた時間や条件の中で目の前の対象者に対して効果検証のためのデザインを組まなければならず、繰り返しの測定が可能でも…
・すぐに介入が必要であるためベースライン期間を設けることができない(Bのみ)
・ベースラインの測定のみで標的行動が獲得された(Aのみ)
・ベースラインを測定した後、一回の介入で改善し独立変数の入れ替えができない(ABデザイン)
などの制約がありSCDを組むことは簡単ではない。
3.SCDの希望
・近年、様々な立場の研究者が精神科臨床の現場においてSCDを用いた実践研究の投稿を推奨(Byiers, Reichle, & Symons, 2012; Holman & Koerner, 2014; Persons & Jensen, 2018; Tate et al., 2016; Woods et al., 2006など)。
・(準実験デザインも含めて)SCDの方法論に基づく実践研究を増やることで、実践と研究を行う上での制約を克服する新たな方法やアイデアの集積に繋がる
・SCDに基づく効果検証を目標としながらも、それが難しい場合であっても可能な限り準実験デザインを用いた効果検証を繰り返すことで実践研究全体の質を高めることが可能に。
【参考文献】
仁藤・奥田・川上・岡本・山本(2021)精神科臨床における応用行動分析学の実践と研究, 行動分析学研究 第35巻 第2号
【ベストコメント】
私が好きになると、相手が不幸になるのでは…と本気で思っていました。
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