精神科臨床における実践と課題
プロローグ
精神科臨床で完成度の高いABA実践の阻害要因
【精神科臨床の特徴】
・類型診断に基づく治療がされている
・言語報告あるいは質問紙尺度による評価
・心理面接における対話の重視
等の制約がある(Kanter et al., 2006; Kohlenberg et al., 1993)
【対応策】
・対象者の日常生活における標的行動をアセスメントし介入する。
・その変化を繰り返し測定することで確認し、介入の有効性をシングルケースデザインで評価する。
以後、応用行動分析の介入を紹介する。
1.行動の直接的評価…応用行動分析学で重視されている (Kazdin, 2011, p. 56; 島宗,2019)。2000~2010 年にかけて出版されたSCDの研究のうち、76%が直接観察によって標的行動の測定を行っている(Smith, 2012)
・CLの生活上の困難を直接観察する工夫をすることで、対話以上の効果検証が可能になる。
例)強迫観念や確認行為のために1人で買い物ができなくなっていたCLに、クリニック近隣のコンビニや薬局を利用して行動を測定し、介入による変化を分析(瀬口2020)。
不安を訴えて人前で食事ができなくなっていたCLに、精神科デイケアを利用して食事量を測定し介入すると同時に、般化の測定として地域の飲食店を利用して食事量を測定(仁藤・奥田 2013)
②行動の間接的評価
標準化された質問紙尺度を使って、診断の補助や心理面接のアウトカム評価に用いる。
例)抑うつを訴えている人に抑うつ尺度を実施し、対象者の日常生活の改善を目標として介入を行い、2回目以降に実施した抑うつ尺度得点に望ましい変化がみられたと判断する。
ただし…
・尺度得点が標的行動そのものを反映しているわけではない(Bentley, Kleiman, Elliott, Huffman, & Nock, 2019)、
・質問への回答は、必ずしも標的行動の変化と一致するわけではない(Leitenberg, Agras, Edwards, Thomson, & Wincze, 1970; Mills et al., 1973; Rosen & Leitenberg, 1982)
・評価のために使用されている標準化された質問紙尺度は集団における使用を前提として標準化されているのであって、目の前の個人に対して信頼性や妥当性は検証されていない(Smith, 2012)
↓
尺度得点を介入の効果を評価するための主要な指標とすることは望ましくない。
※他に行動チェッ クリストなどもあり
2.対話におけるアセスメント
私的事象(その人にしかわからないこと)に関する訴えを無視せず対応する(Kohlenberg et al., 1993)
・訴えを言語行動として捉え、それをアセスメント(機能的アセスメント)する
・報告された私的事象が日常生活の行動に対してどのように機能しているのかを推定し、アセスメントや介入に役立てる
例)面接場面で不安を訴えた時…
ⅰ)私的事象の報告(タクト)としての機能(平たく言うと、本当に感じていることを話している)
ⅱ)私的事象とは直接対応していないが、Thから共感的な声かけをもらうため要求(マンド)として機能(平たくいうと、Thが共感的な対応をしてもらうために訴えている)
ⅲ)「不安」という単語が逃避や回避に関連した行動を引き起こしている可能性(Friman, Hayes, & Wilson, 1998)。
#行動分析 #精神科 #心療内科 #ABA #臨床心理学 #臨床心理士 #カウンセリング #エビデンス #カウンセラー #公認心理師