イマジナリーカキフライにいたる病 最終話
私は輪ゴムを両手に一つずつ取り、つなぎ合わせた。それを左手に持ちかえ、右手で次の輪ゴムを取ってつないでいくという単純作業の繰り返し。お弁当をとめるという役割を終えた輪ゴムたちは、私とお姉さんを結ぶという新たな使命を与えられ、ひとつなぎに連なっていく。運命の赤い糸は、見つけるものではなく、二人で紡いでいくものである。私はひたすら手を動かしながら、頭ではお姉さんとのやりとりを思い返していた。
お弁当を買うときは、毎回現金で支払うことにしてきた。千円札を出すと、お釣りを手渡してもらえる。私がお釣りを財布にしまうのを、お弁当の袋を両手で持ちながらじっと待つ彼女はとてもいじらしく、少しでも長く見つめられていたいなどと考えているつもりはなくても、ついつい動作がゆっくりになってしまっていた。そしてお弁当を受け取る瞬間にも、手と手が触れてしまいそうでドキドキしていたものだ。
今まで受け取ったお釣りは全て、大切に保管していた。特に、フィルムがはがされたばかりの十円玉は、私と彼女だけが触れた宝物であり、キラキラと輝いていた。
彼女だけが、特別に、私だけのために、特別に、からあげが5個入った、4個入りからあげ弁当を、作っていた、はずだったのに。
それなのに・・・
小銭を数えてみた。今となっては、枚数や金額に何の意味もなかった。数え終わった小銭を袋に詰める。それは、私の堪忍袋を具現化したように、パンパンに膨らんでいた。中身がこぼれないように、袋の口をひとつなぎの輪ゴムで、ぐるぐる巻いていく。ぐるぐる、ズンドコ、ぐるぐる、ズンドコ。ついに、堪忍袋の緒が切れてしまった。
その瞬間、私は気づいた。この特別な絆が、果たして本当に存在しているのか?それとも、私の思い込みだったのか?そんなことは、お姉さんに確かめるまでもない。特別な絆は、私が作ってあげればいい。不確かなものに心を乱されるくらいなら、確かな絆を、私が刻み込んであげればいいのだということに。凶器は手に握りしめていた。あとは狂気に身を委ねるだけだった。
こうして、私のリアル堪忍袋は、「鈍器のようなもの」と呼ばれることとなった。
#イマジナリーカキフライにいたる病