経営戦略としてのM&Aには、具体的に8つの効果が期待されます。まず財務的な「アービトラージ」や、重複排除とクロスセルによる「シナジー効果」があり、P&Gなどが成功例として挙げられます。次に、市場シェア拡大による「市場支配力」や、生産・販売の効率を高める「規模・範囲の経済性」も重要です。
さらに、事業多角化で安定性を図る「リスク・コントロール」や、ウォルマートがJet.com買収で示したような時間を買う「アジル・コンペティション」、Amazonの薬局免許取得のような「参入障壁の突破」も戦略的意義が大きいです。タタ・モーターズのように「ブランド・エクイティ」を獲得し、一気に市場地位を築く手法もあります。
一方で、M&Aの60%以上は期待した成果を出せていないという現実もあります。成功の鍵は、これらの効果を正しく理解した上での対象選定と、買収後の組織統合や文化融合を丁寧に進めるマネジメント力にあります。