価格競争から脱出する!あなたのブランドの「比較の土俵」を設計し直す3つのステップ
多くの企業が直面する「価格競争」という消耗戦。そこから抜け出すために必要なのは、製品の値下げでも、ただ目立つ広告でもありません。重要なのは、顧客の頭の中にある「比較の土俵」そのものを設計し直すことです。
本日は、ブランドを唯一無二の存在に変えるための「3つのステップ」を解説します。
ステップ1:Frame of Reference(競争フレーム)を再定義する
ブランド戦略の出発点は、顧客がそのブランドを「何の仲間」だと認識するか、つまり Frame of Reference(競争フレーム) を決めることです。
例えば、最近急成長している「リカバリーウェア」を考えてみましょう。これを「パジャマ」というフレームで売れば、比較対象は3,000円前後の衣類になり、2万円の価格は「高すぎる」と判断されます。しかし、フレームを「リカバリー・健康投資」へ移すと、比較対象はマッサージやジム会費に変わります。
このように参照枠を変えることで、消費者の心理会計(Mental Accounting)を書き換え、支出の「勘定科目」を「アパレル費」から「自己投資」へと移動させることができるのです。競争は参加するものではなく、自ら「設計」するものだと捉え直しましょう。
ステップ2:POP(同質化点)で「安心」と「参加資格」を確保する
次に必要なのが、POP(Points of Parity:同質化点)の整備です。これは、そのカテゴリーにおいて「満たしていて当たり前」と期待される要件です。
差別化(POD)ばかりを急ぐブランドは、このPOPを軽視しがちです。しかし、例えばカフェなら「コーヒーが普通に美味しいこと」「清潔であること」といった最低条件が欠けていれば、顧客は比較する前にあなたを「選択肢から除外」してしまいます。
「POPのない差別化は、単なる不安要素」になってしまいます。まずは顧客の不安を取り除き、土俵に立つための「参加資格」をしっかりと満たしましょう。
ステップ3:POD(差別化点)で「選ばれる意味」を与える
最後に、その土俵の中で顧客があなたを選ぶ「決め手」となる POD(Points of Difference:差別化点) を確立します。
ここでのポイントは、単に「他と違う」ことではなく、「顧客にとって意味を持って違う」ことです。例えば、スターバックスのPODは単なるコーヒーの味ではなく、「サードプレイス(第三の場所)」という空間体験そのものにありました。
ステップ1で決めた Frame of Reference(競争フレーム) と矛盾せず、かつ競合が容易に模倣できない独自性を打ち出すことで、初めて「だから、このブランドがいい」という強力な購入理由が生まれます。
まとめ:ブランドは「構造」でつくられる
ブランド・ポジショニングとは、センスや感性だけで決まるものではありません。
-どの土俵(Frame of Reference)で理解されたいか
-その土俵のルール(POP)を守れているか
-その上でどんな独自の価値(POD)があるか
この3つのステップを一貫した論理で積み上げることで、あなたのブランドは価格競争という濁流から抜け出し、顧客に選ばれ続ける「構造」を手に入れることができるはずです。
(最後に一言) これは、いわば運動会で「足の速さを競う『かけっこ』に出るのか、表現力を競う『ダンス大会』に出るのかを決める」ようなものです。速さで勝てないなら、自分が輝ける「ダンスの土俵」を自ら設計すること。それがブランド戦略の本質です。