値付けに迷っているなら…。
プライシング(値付け)に迷ったら『松竹梅』を思い出しましょう。
企業は、消費者が常に合理的な意思決定を行うわけではないという「限定合理性」を前提に、行動経済学や心理学の知見を戦略的に活用しています。具体的には、「選択肢の提示方法」や「情報の見せ方」を工夫する(選択アーキテクチャの設計)ことで、消費者の意思決定を特定の方向に誘導しています。
主な戦略とその仕組みは以下の通りです。
1. おとり効果(デコイ効果)の活用
2つの選択肢で迷っている消費者に、あえてどちらか一方より明らかに劣る「第3の選択肢(おとり)」を提示することで、売りたい商品の魅力を際立たせる手法です。
具体例: 映画館のポップコーンで、500円の中サイズ(おとり)と550円の大サイズを並べることで、わずか50円の差で容量が増える大サイズを「お得」だと感じさせ、購入を促します。
その他の例: iPhoneの容量ラインナップや、経済誌の定期購読プランなどでも多用されています。
2. 妥協効果(松竹梅の法則)
人間には「極端な選択肢を避け、無難な中間を選ぶ」という極端回避性があります。企業はこれを利用し、意図的に3つ以上の価格帯を用意します。
手法: 本命の商品を「竹(中間)」に設定し、より高価な「松」を追加することで、「竹」がちょうど良い妥協点として選ばれやすくなります。
戦略: 最高級の「松」は、それ自体が売れなくても、他の選択肢の価値を高める「アンカー(基準)」として機能します。
3. アンカリング効果
最初に提示された数字や情報が「基準(アンカー)」となり、その後の判断が縛られてしまう心理を利用します。
具体例: 小売店が「メーカー希望小売価格」と「割引後の販売価格」を並べて表示することで、消費者は元の価格を基準に「大きな割引を得られた」と判断し、購買意欲が高まります。
4. ナッジ(Nudge)とデフォルトの設定
消費者を強制するのではなく、「背中をそっと押す(『肘で軽く小突く』)」ように自発的な選択を促す手法です。
デフォルトオプション: 人は既定の選択肢を変更することを面倒に感じる(現状維持バイアス)ため、最初からおすすめのプランをチェック済みにしたり、動画配信サービスで自動的に次の動画を再生させたりすることで、利用を継続させます。
選択オーバーロードの回避: 選択肢が多すぎると決定できなくなる「決定麻痺」を防ぐため、Amazonなどのサイトではアルゴリズムを用いて「おすすめ商品」を絞り込んで提示します。
5. フレーミング効果と損失回避
同じ内容でも、「得をする」という表現にするか「損を避ける」という表現にするかで反応が変わる現象を利用します。
損失回避: 人は利益を得る喜びよりも損失を避ける痛みを強く感じるため、「今買わないと割引を逃して損をする」といった期間限定オファーや「残りわずか」という表示で即座の行動を促します。
お客さんを迷わせないということもCX戦略の大事なポイントです。