猫は一日、何も言いません。でも、ときどき降りてきてこちらの顔を見る、その沈黙がうれしくて、「何が欲しい?」と声をかけたくなる、何も言わない存在だからこそ、こちらが勝手に気持ちを汲み取ろうとしてしまうのかもしれません。
人も似ていますね。学生でも、大人の会議でも、「どう思う?」と聞くと下を向いて黙ってしまう、考えていないわけではないけれど言葉にしない、その姿にがっかりしながらも、黙って生きることの自由を思います。
思考が先に進みすぎて言葉が追いつかず、授業で黒板の前に立ったまま黙り込み、ときどき外国語を発する天才哲学者・西田幾多郎の姿に、猫の佇まいを重ねてしまいます。
「ランドセル」という言葉はオランダ語が語源で、幕末から戦後を経て、子どもたちの背中に受け継がれてきました。
使われなくなったランドセルが世界の子どもたちへ送られ、読み書きそろばんを支えている。両手が使えて、お弁当も入って、鈴を鳴らしながら一歩一歩歩いていく、そんな当たり前の道具に、静かな優しさと平和への願いが詰まっているのだと思います。