田中槐『ギャザー』 13首選
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午前中わたしは爬虫類であるゆっくり瞬きくらいはできる
傾くとわたしの海があふれ出す いとこのようなやさしさはいや
逃げてゆく君の背中に雪つぶて 冷たいかけら わたしだからね
村へ行く一本道をぱたぱたとカブ走らせて、まさるくんったら
おとうとの独楽しゅんしゅんと止まるまで見てはいけない喧嘩はつづく
「ピコ秒で測定不能」君からの愛はもはやもはや……
立つわたし、いきなり語り出すわたし ウラル=アルタイ語圏のわたし
わたくしは個である。ゆえに類であるあなた方とは美(は)しく繋がる
受話器の向こうで君は赤い目をしていたはずさ 蝶々のテレカ
幾筋もうしろめたさをひきずってO型だから不幸なあなた
くっくっと春の笑いのぎこちなさ赤い鳥居はどこまで続く
どんよりと女ら群れる食卓の赤絵の皿に満たすポタージュ
夜の湖(うみ)ほのかに光る垂線にそってわたしの斧沈みゆく
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ちなみに未来の人は未来の会で「当たると思ってなくてびっくりしましたうんぬんかんぬんどうたらこうたら」をやると、田中槐さんに叱られます。あなたのその発言をきく時間は、だれのなんの役にも立たない。もちろんわたしもかつて叱られた一人なんですが。
mymhndさん ツイート 2015.5.25
会場評は、主水透、田丸まひる、江田浩司、戸田響子、嶋稟太郎、遠野真、服部真里子、桜井夕也、鈴木麦太朗、本条恵、島なおみ、門脇篤史、山階基。「当たると思っていませんでしたもにゃもにゃタイム」が一切なくていいな。結社で鍛えられてる感。(結社じゃなくて槐さんかも)
mymhndさん ツイート 2016.8.21
当時の伊舎堂「こう言える人ってのは絶対におもしろい(怖いからおれは気をつけよう)」
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田中槐さん
2026.5.13 X(Twitter)でのツイート
最近、わたしの第一歌集『ギャザー』を国会図書館で(電子データで!)読んだという若者に続けて会って、本当に申し訳ない気持ちになっている。餅まきみたいにばらまいていた昔のわたしを叱りに行きたい…
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何が申し訳ないって、電子データでは帯は読めないんですよね。あの歌集は柄谷行人の帯文にいちばん価値があるので😅
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📝録音に際してのメモ
逃げてゆく君の背中に雪つぶて 冷たいかけら わたしだからね
↪︎ 「冷たいかけら」といふ、一見不要にみえる説明の語が、「わたしだからね」と対応することで、息をふきかへす。(岡井隆)
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どんよりと女ら群れる食卓の赤絵の皿に満たすポタージュ
↪︎ 第二歌集の『砂の卵』の〈質感を伴った嫌さ〉、エロティックさへ発展するような感じ
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哲学の教授と帰る東横線ヤスパースとアーレントのように
それぞれのダークマターに満たされて恋虫たちはさめざめと泣く
眠る前少しの読書 現実と夢のはざまに「千のプラトー」
「退屈な器」の歌を含め、このあたりの歌に短歌の読者たちはムラっとこなかったのかな、って感じ
ブッキッシュ、ペダンチック、生き物、虫、肩甲骨、とかの人間の部位の名前……
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抒情の歌はあるし、認識の歌もある。しかし、田中槐の歌の新鮮さは、認識と情が対立的に交差する一瞬に、そのいずれでもないような何かをとらえようとしているところにある。
ーーーーー柄谷行人