歌集『オランジェット』
カーテンがあるからでかいバスは好きうまれるまえの竜のまどろみ
雪かきが引き連れてくる空腹は魔獣でそれに食わせるお餅
スコップがすこし曲がって一月の後部座席にそのまま暮らす
きみといるといつもかもめが背景を奥へゆく なぜかな さよなら
夕凪の波打ち際は去るためにあるからやっとふたりは去った
僕にまだ敵に回せる世界すらなかった春の夜のりんご飴
一周忌で来たと寿司屋に答えればほんとうに祖母はもういない
みるままにすなば塗りつぶした雨のそれからだった痛かったのは
もうだれに泣いていいかと問うこともなくてアロエの欠けた切っ先
なーーんだ嘘なんだって笑いあう再会までは傘かりとくね
おこる? って訊かれてさびしかったこと心に柿の黒点ほどに
珈琲を飲んでからする夜歩きは言葉がむしろろころこ眠い
よけたけど酔っていたのですこし踏むぎんなんの実のださいにおいだ
チャイ注げば薪(たきぎ)のにおいにんげんとお酒を飲んで遊んだあとの
死後もあるいは余生だろうか回りくるおすしの上の魳(かます)きときと
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口堅い運転手など連れてまだどこかにいる気がする 後白河
お姉ちゃんみたいなひとがまたひとり人妻になる 縁石をゆく(笠木拓『はるかカーテンコールまで)
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大丈夫ちゃんと呪いだ僕の手は遺書のつもりで書かなくたって
「2013年感」
あまり会ひに来てくれないと(ゆふぞらだ)つよくなんども叱責されて/藪内亮輔『海蛇と珊瑚』
おしばなの栞のやうなきみの死に(嘘だ)何度もたちかへる夏/吉田隼人『忘却のための試論』
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つぎは夜景見せてって手を振ってから改札を抜けざまにブロック
↪︎ 砂糖までチカチカなのかこの星は宇宙にハブられた安い星/篠原仮眠『banana flavored chewing gum』の「ハブられた」
もなかアイス おまえを包むぎんいろの闇をゆびもて裂くときがきた
↪︎ 銅と同じ冷たさ帯びてラムうまし。どの本能とも遊んでやるよ/千種創一『砂丘律』